平成17年11月23日
神戸市勤労会館
今回のお題目(クリックするとそのテーマの川柳が表示されます)
(ラはラッキー賞)
特別席題 「大晦日」 樋口祐子 選
ラ |
一葉とおおつごもりの苦を偲ぶ |
村上氷筆 |
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生きられたことを感謝の大晦日 |
前川千津子 |
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来年に願いを第九響かせる |
室田隆司 |
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捨てるもの買い換えるもの大晦日 |
沼尾美智子 |
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えいやっと悪をリセット大晦日 |
村上氷筆 |
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元気なうち母のおせちを詰めておく |
沼尾美智子 |
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注連飾粘って売ってる大晦日 |
蛯原正弘 |
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一〇八つ鐘に合わせて犬が鳴く |
水田象介 |
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嫁が来て手抜き出来ない大晦日 |
山田信子 |
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雪しきりふり向くだけの除夜の鐘 |
宮本喜明 |
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可もないがさりとて不可も除夜を聴く |
宮本喜明 |
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年の瀬になっても消せぬ脛の傷 |
長島敏子 |
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紅白を避けて静かに墨をする |
森山勝彦 |
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人の背ばかりみてきた大晦日 |
吉川千穂 |
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新春を視野に忙しい年の暮 |
椙元世津 |
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毎日を大晦日とす余命表 |
村岡義博 |
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お金も友も少なくなりつ大晦日 |
田中節子 |
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大晦日ゆっくり来いと電話する |
長野峰明 |
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誓っても未完のままに大晦日 |
山口ヨシヱ |
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出直しは百点今年の大晦日 |
山本芳男 |
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除夜の鐘すこし熱めの燗をする |
豊野光子 |
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大晦日今年の僕にする拍手 |
山本芳男 |
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わが胸を洗い浄める百八つ |
内藤夢彦 |
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八十路生き煩悩騒ぐ大晦日 |
尾畑晴代 |
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一年をまたみのさんで締めくくる |
中村真里子 |
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大晦日立ち止まる人走る人 |
大栗智恵子 |
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煩悩をひとつ消しては鬼嗤う |
神田巳珠 |
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大掃除終わって白む夜は新年 |
奥平駿曳 |
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感慨はそれ程は無き大晦日 |
坂下安伸 |
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恙無く今年も揃い晦日ソバ |
神田巳珠 |
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今日一日で役目を果すカレンダー |
橋本凉子 |
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錆落しの酒飲みながら除夜の鐘 |
松下比ろ志 |
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別腹へ年越そばを流し込む |
黒嶋海童 |
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元旦の扉を開ける夢を織る |
大栗智恵子 |
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大晦日今年も僕はガラス拭き |
水田象介 |
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しがらみの一つが消える大晦日 |
上村さな恵 |
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老二人町へ師走を浴びに行く |
蛯原正弘 |
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小走りの挨拶かわす大晦日 |
田中節子 |
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来る福も去る福もある大晦日 |
黒嶋海童 |
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音階を外す不在の大晦日 |
田中節子 |
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ジェラシーにズキンと刺さる百八つ |
長島敏子 |
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誇れない月日重ねて大晦日 |
仲田秀子 |
人 |
返せないままに今年も大晦日 |
前川千津子 |
地 |
年越しのソバが明日へ伸びそうだ |
長野峰明 |
天 |
十二時をまわると新しい私 |
中村真里子 |
軸 |
薄倖の一葉偲ぶ大晦日 |
樋口祐子 |
兼題 「筆」 蛯原正弘 選
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ラブレター決意半ばで転ぶ筆 |
斎藤功 |
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左遷地へ子の鉛筆の手紙来る |
黒嶋海童 |
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筆不精すぐダイヤルに触れる指 |
仲田秀子 |
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墨の香の追伸五感ゆさぶって |
山本ひさゑ |
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落書の達筆だから腹の立つ |
長野峰明 |
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紅筆の先きに溺れてゆく鏡 |
山本ひさゑ |
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紅筆の色褪せてゆく秋の雨 |
みぎわはな |
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筆滑り冷たい風の中に立つ |
坂下安伸 |
|
五十年文箱の底のラブレター |
山本芳男 |
|
達筆でないがまごころ届けます |
山口ヨシヱ |
|
命名の筆渾身の念を入れ |
森山勝彦 |
|
美しい筆あと残し風が去る |
山本ひさゑ |
ラ |
校正の朱にぎやかに返される |
村岡義博 |
|
切れ長に女の夢をえがく筆 |
斎藤功 |
|
絵手紙の筆はとっても遊び好き |
村上氷筆 |
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おちょぼ口紅さす筆の七五三 |
豊野光子 |
|
紅筆で恋の数だけなぞります |
中村真里子 |
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転結を書いて一人の尊厳死 |
山本芳男 |
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筆持つと父の背筋はぴんと伸び |
内田秀章 |
|
筆の先揃えてこころ走り出す |
山口ヨシヱ |
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鉛筆の訛りが並ぶ老母の文 |
宮本喜明 |
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口下手の分だけ筆がよく走り |
青木公輔 |
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筆ペンの寄せ書き届く霜の月 |
上村さな恵 |
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言訳に弘法の名を借りてくる |
倉田雄登美 |
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毛筆は妻に委せて墨をする |
内田秀章 |
|
筆持つ手に秋が軋んでいた窓辺 |
花田俊枝 |
|
秋空に絵筆ゆだねて画家となる |
橋本凉子 |
|
筆先が震えて別れ言い出せぬ |
長島敏子 |
|
世相の筆漢字一字が暮れてゆく |
増田左代子 |
|
国宝が勘亭流で待つ師走 |
村岡義博 |
|
熱冷めて一筆箋で足りる愛 |
長島敏子 |
|
悪筆も筆まめ故に喜ばれ |
内藤夢彦 |
|
一筆で書くには哀が深すぎて |
長島敏子 |
|
さらさらとゆかぬ筆から詩が生まれ |
宮本喜明 |
|
筆の跡母をなぞれば熱くなる |
赤井花城 |
|
癌と書きそびれて筆を折る未明 |
竹内一人 |
佳 |
紅筆に口止めしてるある余韻 |
長野峰明 |
佳 |
筆洗う墨の流れに無を流す |
増田左代子 |
佳 |
写経する指の冷たさ冬立ちぬ |
辰巳和子 |
佳 |
あわあわと墨が溶け合う草書体 |
大栗智恵子 |
佳 |
晩学の鉛筆芯は丸くする |
黒嶋海童 |
人 |
命名の筆どっしりと太く書く |
山田信子 |
地 |
雲の位置考えている絵の具筆 |
田中節子 |
天 |
残り火を燃やす紅筆買い替える |
辰巳和子 |
軸 |
筆代り割箸使う色紙展 |
蛯原正弘 |
兼題 「コーヒー」 中本三桂 選
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コーヒーの香り楽しむ菊日和 |
上月智恵子 |
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コーヒーにだんだん解けてゆく昨日 |
山本芳男 |
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コーヒーに独りの時間刻を止め |
みぎわはな |
|
割り勘のコーヒーカップ渦を巻く |
森山勝彦 |
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偽証して胃にコーヒーを流し込む |
山本ひさゑ |
|
コーヒーを前にそれぞれ過去の森 |
毛利きりこ |
|
コーヒー再び名画鑑賞のあとで |
中西保子 |
|
珈琲の香り北野は恋の街 |
吉川千穂 |
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新聞を隅まで読んでモーニング |
神田巳珠 |
|
反省と少し夢みて飲むコーヒー |
斎藤功 |
ラ |
コーヒーが冷めても浮いてこぬ答 |
長島敏子 |
|
モカの香とくつろぐ時を大切に |
小山紀乃 |
|
一杯の珈琲で聴くジャズ喫茶 |
神田巳珠 |
|
午後の雨そこにショパンもコーヒーと |
宮本喜明 |
|
コーヒーの苦さ想い出なお苦し |
前川千津子 |
|
コーヒー誘い恋の作戦第一歩 |
内藤夢彦 |
|
オランダ坂レトロが似合う喫茶店 |
蛯原正弘 |
|
コーヒーの別れ港に灯がともる |
中西保子 |
|
コーヒーが雨を聴いてる物思い |
長野峰明 |
|
ベレー帽ブラックで飲み渋い顔 |
河端世起子 |
|
湧水のひと味ちがうコーヒー飲む |
山田信子 |
|
ドリップコーヒーポツリぽつりと湧く思い |
松下比ろ志 |
|
お砂糖の数は昔のままですか |
辰巳和子 |
|
珈琲のエキゾチックを飲む神戸 |
村上氷筆 |
|
満天の星合宿の子に珈琲 |
花田俊枝 |
|
コーヒーの香りマスター無口なり |
椙元世津 |
|
コーヒーを混ぜて本音を探りだす |
長野峰明 |
|
たっぷりのミルク構想練っている |
増田左代子 |
|
コーヒーに溶けるミルクのような愛 |
松下比ろ志 |
|
息抜きにひと駅歩きカフェオーレ |
沼尾美智子 |
|
しみじみとコーヒー一年振り返る |
山田信子 |
|
新生活対のカップに愛籠める |
河端世起子 |
|
コーヒーとビールに分かれ盛り上がる |
毛利きりこ |
|
コーヒーかビールかまよう夜の街 |
仲田秀子 |
|
コーヒーに今日の幸せ溶けこませ |
内藤夢彦 |
|
十六夜の月に未練のアメリカン |
樋口祐子 |
佳 |
とんとんと商談コーヒーが旨い |
黒嶋海童 |
佳 |
読書の灯いつも寄り添うマグカップ |
室田隆司 |
佳 |
止まり木のコーヒー今日の締めくくり |
上村さな恵 |
佳 |
枯葉舞うコーヒーカップ熱くする |
山口ヨシヱ |
佳 |
しみじみと珈琲母のうしろ影 |
山口ヨシヱ |
人 |
コーヒーを飲む空白の時間帯 |
赤井花城 |
地 |
たっぷりとコーヒー左脳遊ばせる |
辰巳和子 |
天 |
秋はショパン至福のときをコーヒーと |
仲田秀子 |
軸 |
コーヒーに砂糖たっぷり物思い |
中本三桂 |
兼題 「英語」 田中節子 選
|
ABC唇を噛み舌を噛み |
水田象介 |
|
先生はイケメン英語好きになる |
辰巳和子 |
|
ギヴミーチョコ幼い頃の苦い味 |
黒嶋海童 |
|
電子辞書一度も使わない英和 |
赤井花城 |
|
教科書に墨塗り英語押しつけた |
坂下安伸 |
|
調教の犬も理解をする英語 |
橋本凉子 |
|
英会話も混ざり生田の七五三 |
椙元世津 |
|
少しだけ英語話せている天狗 |
前川千津子 |
|
カタコトの英語でやっとバッグ買う |
山田信子 |
|
おばあちゃんサンキューと言いお茶を飲む |
村上静子 |
|
英語圏ならばどこでも行ってやろ |
蛯原正弘 |
|
喧嘩だと英語でてくる帰国子女 |
小山紀乃 |
|
サンキューの一つを掲げてニューヨーク |
宮本喜明 |
|
お師匠さんオーケー・ノーで通じ合う |
増田左代子 |
|
敵国語憎んだはずのなし崩し |
山本ひさゑ |
|
英語より古語漢文で勝負する |
水上たお子 |
|
流暢な英語で話す茶髪の娘 |
上月智恵子 |
|
英語とは無縁で生きた火吹竹 |
山本ひさゑ |
|
はったりの指で英語の辞書捲る |
山本芳男 |
|
ベランダに英語の花が咲いている |
沼尾美智子 |
|
洋子レノン美しい日本語英語 |
沼尾美智子 |
|
美しい別れにしたいアイラブユー |
上村さな恵 |
|
カタカナをすべて英語と祖母は言う |
奥平駿曳 |
|
街ゆけばまた突き当る英字板 |
山口ヨシヱ |
|
英語ではないのに手紙横書きに |
毛利きりこ |
|
アイ・アム・ア農林イモと云うた姉 |
樋口祐子 |
|
イエスマン裏の英語も知り尽くす |
山本芳男 |
|
プリーズとサンキューだけで旅を行く |
みぎわはな |
|
カタコトの英語で商売をする租界 |
中西保子 |
|
三歳がシーユーアゲイン時雨来る |
山口ヨシヱ |
|
訛りある英語じゃ俺も訳せない |
宮本喜明 |
|
話しかけられた英語と棒になる |
小山紀乃 |
|
英語で返事したらおおけにと言われた |
花田俊枝 |
|
ロンドンの犬へ英語で手を伸ばす |
奥平駿曳 |
|
説教を孫は英語で逃げよった |
大栗智恵子 |
ラ |
話せないと言わず嫌いという英語 |
村上氷筆 |
佳 |
片仮名の英語で敵を煙に巻く |
赤井花城 |
佳 |
サンキューと気軽く消しゴムを返し |
椙元世津 |
佳 |
何を食ったか和製英語がよう喋る |
長野峰明 |
佳 |
チェリーよりやはり桜と言う方が |
内藤夢彦 |
佳 |
ライバルが英語で口説くから怖い |
山本芳男 |
人 |
看板の英語違っていませんか |
赤井花城 |
地 |
英語には訳せぬ文化持つ誇り |
小島知無庵 |
天 |
向こうから英語が二人やって来る |
水田象介 |
軸 |
英語など知らなくてよい背中です |
田中節子 |
兼題 「鉄」 村上氷筆 選
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大工道具揃えにきやびん詣でます |
村岡義博 |
|
鉄棒にしばられ聞いた子守唄 |
倉田雄登美 |
|
あれ以来鉄のカーテン妻が引く |
辰巳和子 |
|
今日もまた食べ過ぎほぐす鉄アレイ |
樋口祐子 |
|
母さんの味が沁み込む囲炉裏鍋 |
辰巳和子 |
|
鉄板へお好み焼の温かさ |
蛯原正弘 |
|
廃線のゆるいカーブに老いた月 |
宮本喜明 |
|
鉄の意志三日で破れ酒を飲み |
内藤夢彦 |
|
震度五でこける鉄筋ビルにいる |
中西保子 |
|
船造る鉄で汚れた作業服 |
中本三桂 |
|
子の囓る脛には鉄の芯を入れ |
斎藤功 |
|
鉄橋の音から故郷もう間近 |
椙元世津 |
|
居酒屋は鉄砲玉の吹き溜り |
大栗智恵子 |
|
鉄瓶のずっしり重い腰の張り |
室田隆司 |
|
糠漬の茄子へ古釘艶をあげ |
村上静子 |
|
鉄瓶は座敷童を知っている |
水田象介 |
|
くず鉄にくず鉄なりの自尊心 |
沼尾美智子 |
|
鉄拳を知らぬ少子化にある脆さ |
長野峰明 |
|
沈黙の鉄にもあった意思表示 |
上村さな恵 |
ラ |
夕やけもあと押ししてる逆上がり |
河端世起子 |
|
鉄条網の向こうは基地という他国 |
中村真里子 |
|
決心は鉄より堅い父の背 |
小山紀乃 |
|
地下鉄を出て燦々と陽を浴びる |
赤井花城 |
|
紐先に磁石垂らして歩いてる |
水田象介 |
|
古里にまだ鉄瓶のあり老父の髭 |
山本ひさゑ |
|
煮えきらぬ男を鉄板焼きにする |
内田秀章 |
|
屑鉄を拾い世すぎをしたあの日 |
黒嶋海童 |
|
鉄筆の文字刻む音夜が明ける |
奥平駿曳 |
|
鉄則は戦をしないことである |
椙元世津 |
|
人類に鉄器時代がまだ続く |
赤井花城 |
|
赤錆の砲台のまま晒される |
室田隆司 |
|
鉄人に重ね着させた白い花 |
増田左代子 |
|
黒豆と性の合う釘選っている |
橋本凉子 |
|
逆あがり出来た鉄棒夕やける |
仲田秀子 |
|
錆も出る切れ味も良い二面性 |
小島知無庵 |
|
オレと鋏を上手に使う山の神 |
長野峰明 |
佳 |
鉄骨を晒しバブルのビル残る |
黒嶋海童 |
佳 |
真人間鉄の強さを抱いて冬 |
吉川千穂 |
佳 |
燃え尽きて鉄の炎にある持論 |
山本芳男 |
佳 |
鉄だけのドームへ途絶えない祈り |
内田秀章 |
佳 |
鉄棒をなくした鬼と住んでいる |
大栗智恵子 |
人 |
月照らす野戦に果てた鉄兜 |
荒垣秋野 |
地 |
敵か味方か磁石に迷う鉄である |
尾畑晴代 |
天 |
鉄ナベの錆からもらう処世訓 |
上村さな恵 |
軸 |
寸鉄のうずきが止まず夜が白む |
村上氷筆 |
【出席者】 (順不同・敬称略) |
水田 象介 |
内田 秀章 |
森山 勝彦 |
長野 峰明 |
大栗智恵子 |
水上たお子 |
神田 巳珠 |
倉田雄登美 |
上村さな恵 |
豊野 光子 |
蛯原 正弘 |
辰巳 和子 |
山田 信子 |
中村真里子 |
中西 保子 |
吉川 千穂 |
尾畑 晴代 |
仲田 秀子 |
長島 敏子 |
村上 静子 |
橋本 凉子 |
河端世起子 |
小島知無庵 |
花田 俊枝 |
斎藤 功 |
室田 隆司 |
中本 三桂 |
椙元 世津 |
田中 節子 |
宮本 喜明 |
毛利きりこ |
山口ヨシヱ |
前川千津子 |
黒嶋 海童 |
沼尾美智子 |
坂下 安伸 |
増田左代子 |
内藤 夢彦 |
荒垣 秋野 |
松下比ろ志 |
奥平 駿曳 |
村上 氷筆 |
村岡 義博 |
山本 芳男 |
樋口 祐子 |
赤井 花城 |
【投 句】 |
上月智恵子 |
みぎわはな |
山岡 幸一 |
小山 紀乃 |
青木 公輔 |
竹内 一人 |
上原 翔 |
山本ひさゑ |
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