平成16年11月28日
神戸市勤労会館
今回のお題目(クリックするとそのテーマの川柳が表示されます)
(ラはラッキー賞)
特別席題 「札」 山本芳男 選
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いずれ出て行く新札を仕舞いこむ |
黒嶋海童 |
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こんにちは一葉さんに会うお札 |
上村さな恵 |
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通せんぼされた英世は漱石に |
水田象介 |
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夫を疑う帯封の札束 |
水上たお子 |
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一つ屋根夫婦別姓掛けてある |
大栗智恵子 |
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表札の古さを誇る五葉松 |
増田左代子 |
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札束へ首を振らない自己主張 |
古谷日出夫 |
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百人の歌は雅に人が酔う |
小島知無庵 |
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新札の手触りを知る指の腹 |
長島敏子 |
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札入れは要らぬ千円しか持たず |
森山勝彦 |
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ポケットから無雑作に札出す若さ |
福島直球 |
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漱石も一葉も胸に冬ごもり |
樋口祐子 |
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旧札の五十銭持っている八十路 |
里嘉矩 |
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人生の札所こつこつ歩き出す |
小山紀乃 |
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常識という偽札にまどわされ |
山中忠 |
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明日からの幸せを呼ぶ札の価値 |
吉川千穂 |
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新札はしばらく家に住まわせる |
坂下安伸 |
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札ビラで動くかどうか張ってみな |
上原翔 |
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孫の数だけ新札お年玉 |
山田蔦路 |
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ネオン街の深みに軽い札の舞う |
橋本凉子 |
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犬の名も表札に書く核家族 |
黒嶋海童 |
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一葉一枚ですむ一週間 |
水田象介 |
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二千円札出され一瞬手が止まる |
室田隆司 |
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受付で万札出して後回し |
村岡義博 |
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一葉も英世も急ぐ暮れの街 |
長島敏子 |
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検札へ狸寝入りを起こされる |
森山勝彦 |
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改札機疲れた切符吸うてゆく |
長島敏子 |
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退院の名札記念に神棚に |
村上氷筆 |
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わが身より家内安全千社札 |
村上氷筆 |
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札入れを新しくする街師走 |
前川千津子 |
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新札へ透かしを見たりさすったり |
坂下安伸 |
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引力に逆らってみる札の束 |
山中忠 |
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美人で良かったね樋口一葉 |
荒垣秋野 |
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タンスの中で旧いお札が動き出す |
みぎわはな |
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安全運転しろとお守り札揺れる |
内田秀章 |
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イケスカン男お札の向きを揃えてる |
島田握夢 |
ラ |
札束を握って罪を深くする |
前田久雄 |
佳 |
一枚の札笑ったり踊ったり |
前田久雄 |
佳 |
目を閉じて新札の痣撫でてみる |
室田隆司 |
佳 |
札入れのでっかいわりにけちな奴 |
長野峰明 |
佳 |
新札を留めることをせぬ財布 |
上原翔 |
佳 |
わたくしに落札されていた見合い |
村上氷筆 |
人 |
一札を入れても懲りてない浮気 |
内田秀章 |
地 |
指紋がちびてしまい札がよく滑る |
島田握夢 |
天 |
くたぶれた札よ働きすぎた妻だ |
山田蔦路 |
軸 |
傲慢な心に入り込むお札 |
山本芳男 |
兼題 「近い」 神田巳珠 選
ラ |
近づいてごらん開くんだよ扉 |
長島敏子 |
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実家が近くけんかの度に夫が詫び |
坂本須磨代 |
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近道を選んだ悔いがふとよぎり |
上月智恵子 |
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笹舟よ急げユートピアが近い |
竹内一人 |
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ついさっき行ったと思うのにトイレ |
黒嶋海童 |
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叫んでもいいよ目の前は海原 |
沼尾美智子 |
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近道に仕掛けめぐらす蜘蛛の糸 |
長川哲夫 |
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君の吐息があまり近くてうろたえる |
上村さな恵 |
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婚約かよくゆれているイヤリング |
前田久雄 |
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近眼で乱視美人に見える妻 |
内田秀章 |
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耳朶をくすぐるおねだりの吐息 |
竹内一人 |
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疲れますスープのさめぬ距離に住む |
森山勝彦 |
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雷鳴に入浴中の妻悲鳴 |
倉田雄登美 |
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嫁ぐ日が近づき父は貝になる |
山中忠 |
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遠近の眼鏡で睨む意地悪さ |
山本芳男 |
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消防署の隣に住んでいる安堵 |
みぎわはな |
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裏表背中あわせの別の貌 |
宮本喜明 |
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近況をあっさり書いて出す手紙 |
吉川千穂 |
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売れっ娘はオンナに見えるけどオトコ |
上原翔 |
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近い将来結婚します薬指 |
橋本凉子 |
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娘の挙式近づきにがくなる手酌 |
内田秀章 |
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マジシャンの指が惑わす眼の前で |
上村さな恵 |
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安近短幹事の腕の見せどころ |
村上氷筆 |
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お近くに来たついでだと見舞い客 |
長川哲夫 |
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お近づきになどと酌いでる下心 |
長野峰明 |
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元カレは近くにきたのどうしよう |
内藤夢彦 |
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忍ぶ恋愛は近くてまた遠く |
みぎわはな |
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そんな壁壊せばみんな近くなる |
室田隆司 |
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ニアミスはいやと足組む前の席 |
森山勝彦 |
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近道と思って行けば行き止まり |
村上静子 |
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膀胱に引っ張り出され夜三度 |
村岡義博 |
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チンパンジーと差は1%ヒトゲノム |
村岡義博 |
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交番の隣で下着盗まれる |
内田秀章 |
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男と女近くて遠い溝がある |
吉川千穂 |
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呼び止めて間近に見れば人違い |
長野峰明 |
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近過ぎる名所へ魅力感じない |
上原翔 |
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徒歩三分嫁から届くダンゴ汁 |
樋口祐子 |
佳 |
出張は嘘だろ電話の声が近過ぎる |
島田握夢 |
佳 |
求婚は近いと母にだけ告げる |
山田蔦路 |
佳 |
醜さを脱いで揚羽の翔ぶ構え |
古谷日出夫 |
佳 |
華燭の日間近いとしさ増す娘 |
村上氷筆 |
佳 |
さりげなく歩幅を合わす妻の息 |
山中忠 |
人 |
胎動へ母となる日の毛糸編む |
山本芳男 |
地 |
正解の近くで迷う正義感 |
長島敏子 |
天 |
羽化間近子の反論が増えてくる |
山本芳男 |
軸 |
結論は遠い人より近いひと |
神田巳珠 |
兼題 「理由」 島田握夢 選
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説明の出来ぬところで酔いがさめ |
森山勝彦 |
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詰問にしどろもどろを並べ立て |
増田左代子 |
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深い訳あって愛より金を取る |
内田秀章 |
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理由もなくいらいらしてる喉ぼとけ |
竹下かすみ |
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辞表には一身上としか書かず |
上原翔 |
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いい訳はしない女にある度胸 |
吉川千穂 |
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理由などいらぬ優しい国訛り |
山中忠 |
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何とでも理由をつけて会いに行く |
黒嶋海童 |
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そんなつまらん理由で別れるのはおよし |
青木公輔 |
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あの暗さ何か理由あり美人妻 |
小坂信子 |
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言訳が置いた受話器にまだ溢れ |
大栗智恵子 |
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くどくどと述べる理由を怪しまれ |
水上たお子 |
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理由ありのリンゴ悲しいまでの赤 |
山本芳男 |
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バツイチの理由が知りたいいい男 |
竹下かすみ |
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わけありの男女に秋が深くなる |
上月智恵子 |
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理由などないが愛には溺れてる |
吉川千穂 |
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男には死んでも言えぬ訳もある |
長野峰明 |
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言訳を詰めこんでいる終電車 |
水田象介 |
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あれこれと理由をつけて朝帰り |
竹下かすみ |
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青春のあの日理由もなく涙 |
上村さな恵 |
ラ |
獨身の理由を聞けばニューハーフ |
尾畑晴代 |
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許すのに理由など聞かぬ手を握る |
宮本喜明 |
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弾んでる声に理由を聞いてみる |
村上静子 |
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理由を聞いて誤解だったと恥じている |
村上静子 |
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裏切りの理由を知っている小指 |
仲田秀子 |
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ずる休み理由の種は盡きている |
坂下安伸 |
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とりたてて理由聞きたくない話 |
里嘉矩 |
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理由など好きか嫌いに決まってる |
室田隆司 |
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泣く美人男らさっと寄って来る |
村上氷筆 |
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理由なんて流れる雲に聞けばいい |
宮本喜明 |
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東大を落ちた理由がわからない |
辰巳和子 |
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好きだから別れましたとそっけない |
竹内一人 |
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くどいほど理由を聞いてくる理由 |
増田左代子 |
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理由など聞かずスパッと貸してくれ |
福島直球 |
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一呼吸おいて理由を模索する |
吉川千穂 |
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お察しの通りと理由うまく逃げ |
長野峰明 |
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理由など無いが貴女を撮っている |
坂下安伸 |
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理由なく父に逆らう声変り |
仲田秀子 |
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賞められる理由ないのにほめられる |
小山紀乃 |
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こんなにも太った理由がわからない |
荒垣秋野 |
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子犬抱いて勝手な理由述べに来る |
室田隆司 |
人 |
それなりの理由を並べて茶をにごす |
樋口祐子 |
地 |
やんわりと真綿が理由聞きに来る |
長野峰明 |
天 |
一汁一菜ひとりがいいという理由 |
小山紀乃 |
軸 |
あの人は駄目ですヒールが履けません |
島田握夢 |
兼題 「温い」 尾畑晴代 選
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公園の鳩と温もり待つベンチ |
大栗智恵子 |
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魂をチンしてみたが温もらず |
宮本喜明 |
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冷徹な男のくせに手は温い |
黒嶋海童 |
|
炊き出しの温いお粥に生き返り |
福島直球 |
|
母の背を流した温み掌に残る |
小島知無庵 |
|
今日からはひとりではない温い部屋 |
村上氷筆 |
|
地の温み信じて花の種を蒔く |
大栗智恵子 |
|
結論は温いことばで締めくくる |
上村さな恵 |
|
風邪気味にふくろうの様まるく着る |
倉田雄登美 |
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城崎の湯上りに出る蟹づくし |
水田象介 |
|
快復の兆しか友の手が温い |
水上たお子 |
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ふる里は不遇の身にも温い風 |
黒嶋海童 |
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凩の中であなたの手を包む |
みぎわはな |
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留守電に温い言葉を添えて置く |
辰巳和子 |
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温い手であったと亡父を記憶する |
黒嶋海童 |
|
何はともあれ両手に囲む温いお茶 |
橋本凉子 |
|
立ちどまる母似の温い国訛り |
長川哲夫 |
|
独り住む姑へ贈った羽根布団 |
村上静子 |
|
温もりを集めて送る被災地に |
内藤夢彦 |
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手の温みさらった儘の別れかな |
流郷貞子 |
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行きずりの温い火囲む旅の町 |
赤井花城 |
|
この冬は二人になって温い夜 |
坂下安伸 |
|
自由席こんなに温い人ばかり |
山中忠 |
|
引き算に疎いが温い母の指 |
山中忠 |
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顔ぶれが温い今夜もいい酒に |
小山紀乃 |
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味噌汁の匂だ今日も頑張るぞ |
竹内一人 |
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ぬくぬくのごはんがあれば幸せだ |
河端世起子 |
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冬の街温さがたまる募金箱 |
上村さな恵 |
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人肌の温みが欲しい一人の夜 |
水上たお子 |
ラ |
輪の中に入れば温い人ばかり |
村上氷筆 |
|
床擦れをさせない嫁の手が温い |
古谷日出夫 |
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軒下の温い日差しの吊るし柿 |
増田左代子 |
|
温もりを頂いてます欠け茶碗 |
神田巳珠 |
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小春日の中で見つけた道しるべ |
長島敏子 |
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変りはないか息子の声があたたかい |
萩原皐月 |
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父のふところ温い日を子等は知り |
福島直球 |
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冷たい方がまっし温みの残る便器 |
島田握夢 |
佳 |
老いふたりはじめて温い手をつなぐ |
仲田秀子 |
佳 |
温い手の人に騙され寒い月 |
水田象介 |
佳 |
湯たんぽのぬくさ昭和がよみがえる |
青木公輔 |
佳 |
雪を描き一筆箋の温かさ |
沼尾美智子 |
佳 |
故郷の土の温さを知る素足 |
山本芳男 |
人 |
体温がかすかに残る君の椅子 |
赤井花城 |
地 |
触診の女医さんの手温かった |
内田秀章 |
天 |
修羅越えた人だとわかる掌の温さ |
山本芳男 |
軸 |
銀杏散り敷く温い歩道になりました |
尾畑晴代 |
兼題 「ルミナリエ」 山田蔦路 選
ラ |
十年の気持あらたにルミナリエ |
森山勝彦 |
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心の奥まで輝いてルミナリエ |
中本三桂 |
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ルミナリエ話のネタに昼歩く |
上原翔 |
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ルミナリエ淋しい星が紛れ込む |
赤井花城 |
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ルミナリエ一気に告白するつもり |
辰巳和子 |
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ライトアップした瞬間のルミナリエ |
村上静子 |
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ルミナリエ光り師走がそれそこに |
山本芳男 |
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絵ハガキで老母に見せてるルミナリエ |
村上静子 |
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遠距離の恋引き寄せるルミナリエ |
みぎわはな |
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ルミナリエ師走の夜があたたかい |
黒嶋海童 |
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ビルの谷間に人溺れてるルミナリエ |
橋本凉子 |
|
ルミナリエ誰かの豚マンが臭う |
島田握夢 |
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魂を奪われに行くルミナリエ |
赤井花城 |
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ルミナリエ去年の友はもう居ない |
黒嶋海童 |
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止るなと叱られながらルミナリエ |
島田握夢 |
|
明日への希望で点すルミナリエ |
前川千津子 |
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人々の瞳かがやくルミナリエ |
倉田雄登美 |
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復興のパワーをくれたルミナリエ |
内田秀章 |
|
ルミナリエ今年も無事に暮れそうだ |
長島敏子 |
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歳末の神戸色どるルミナリエ |
里嘉矩 |
|
面影にまた逢えそうなルミナリエ |
長島敏子 |
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はるばると土産話のルミナリエ |
小山紀乃 |
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ルミナリエ母に手紙を書けと言う |
山中忠 |
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一年がはや暮れてゆくルミナリエ |
上原翔 |
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喝采にドラマを綴るルミナリエ |
竹下かすみ |
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ルミナリエの死角で恋が走りだす |
山本芳男 |
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ルミナリエ越後の里はみぞれ雨 |
水田象介 |
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天国への道を彩るルミナリエ |
長野峰明 |
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ルミナリエあなたの腕を離さない |
沼尾美智子 |
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裏方さんに感謝してみるルミナリエ |
上村さな恵 |
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ルミナリエ私が主役光うけ |
豊野光子 |
佳 |
ルミナリエ矢張今年も杖をつく |
坂下安伸 |
佳 |
より添って二人とけこむルミナリエ |
森山勝彦 |
佳 |
リストラの父を連れ出すルミナリエ |
内田秀章 |
佳 |
ルミナリエひかりの波に乗る私 |
吉川千穂 |
佳 |
ルミナリエ春の詩人へいざ乾杯 |
山中忠 |
人 |
独り占めするにはデカイルミナリエ |
竹内一人 |
地 |
まなうらに今もあの日のルミナリエ |
小山紀乃 |
天 |
ルミナリエその人混みにいて平和 |
長島敏子 |
軸 |
父老いて神経くたくたルミナリエ |
山田蔦路 |
【出席者】 (順不同・敬称略) |
大栗智恵子 |
吉川 千穂 |
神田 巳珠 |
村上 氷筆 |
森山 勝彦 |
宮本 喜明 |
内田 秀章 |
豊野 光子 |
上村さな恵 |
尾畑 晴代 |
橋本 凉子 |
流郷 貞子 |
室田 隆司 |
前田 久雄 |
長野 峰明 |
小島知無庵 |
長川 哲夫 |
黒嶋 海童 |
山中 忠 |
山田 蔦路 |
中西 保子 |
仲田 秀子 |
水上たお子 |
増田左代子 |
村上 静子 |
長島 敏子 |
前川千津子 |
上原 翔 |
古谷日出夫 |
竹下かすみ |
荒垣 秋野 |
坂下 安伸 |
倉田雄登美 |
萩原 皐月 |
小坂 信子 |
椙元 世津 |
水田 象介 |
内藤 夢彦 |
辰巳 和子 |
みぎわはな |
村岡 義博 |
島田 握夢 |
山本 芳男 |
新里 俊郎 |
福島 直球 |
里 嘉矩 |
小山 紀乃 |
樋口 祐子 |
赤井 花城 |
【投 句】 |
坂本須磨代 |
上月智恵子 |
竹内 一人 |
河端世起子 |
青木 公輔 |
中本 三桂 |
沼尾美智子 |
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