平成16年7月18日
神戸市勤労会館


今回のお題目(クリックするとそのテーマの川柳が表示されます)

(ラはラッキー賞)
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特別席題  「海」  坂下安伸 選
海向いて揺れる干し蛸海を恋う 内田秀章
煮こまれたおでん海辺で父と食べ 前川千津子
子ははしゃぎ私に憩い呉れる海 村岡義博
追憶の海は今年も波荒く 荒垣秋野
海が産み海に還っていく輪廻 村上氷筆
砂時計さらりと流す海の日に 吉川千穂
海坊主確かに見たと云う男 水田象介
海の絵に椰子の実の歌うたう母 荒垣秋野
夢に破れた子を抱きとめる母の海 上村さな恵
歴戦の垂れた乳房は海の底 小島知無庵
不採用テトラポットのそばに佇つ 萩原典呼
カラフルな水着震える海開き 内田秀明
泣けば済む泪を海にすてにいく 吉川千穂
リンゴ半熟少女の海は無限大 上村さな恵
鍋焦がすおんなを焦がす夏の海 吉川千穂
海を恋うこともなくなりバナナアボガド 田中節子
胸のうち話すわたくしだけの海 沼尾美智子
生きる方途(みち)性根つかめと父の海 長野峰明
大波小波われ動ぜず沖へ漕ぐ 樋口祐子
海水着今年は買うと決めたはず 前川千津子
海へ海へとあめんぼの旅続く 増田左代子
泳ぐ人待つ間は波の音を聞き 椙元世津
結局の未来は海につきるのか 山田蔦路
母逝ってじっと聴いてる海の声 村上氷筆
決断と思う船出の親離れ 大栗智恵子
思い出の真ん中にある故郷の海 長島敏子
海鳴りが悲しくひびく一人旅 村上静子
たんすの底赤い水着が海を呼ぶ 中西保子
車窓からやれやれほっと故里の海 尾畑晴代
もういやや海月になった夫婦仲 小島知無庵
再会へ海の青さが目にしみる 沼尾美智子
大海を雑魚ざこなりに泳ぎ切る 古谷日出夫
海が好き兄弟なにも求めない 山田蔦路
見えなくて幸せ者だ深海魚 水田象介
遠浅へ影と泳いだ海の色 中本三桂
深海魚のノック十七歳の目覚め 増田左代子
自我捨てて静かに海と向い合う 長島敏子
きつすぎる光に私ひるむ海 村岡義博
針抜くと海へ還せと言う鰈 内藤夢彦
沖へ沖へ沖には何かありそうな 室田隆司
ストレスを洗ってやると海は言い 内藤夢彦
それからを海が怖いか海嫌い 前川千津子
人ひとり呑んだと見えぬ今朝の凪 村上氷筆
流れ藻の陰生き延びる雑魚として 萩原典呼
骨老いてカタカナの海泳げない 長野峰明
時化つづく極よろずの神祈る 坂下安伸

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兼題  「世話」  田中節子 選
よちよちの姉おとうとの世話を焼き 椙元世津
お世話になりましたと妻は出てゆき 水田象介
世話好きの見合写真に一目惚れ 里嘉矩
この嫁はいややいややと世話かける 小島知無庵
子ら巣立ち一当世話のやける夫 橋本凉子
いかほどの世話で咲いたか青いバラ 樋口祐子
最期まで看取ってあれもこれも悔い 赤井花城
水をやる母は花にも語りかけ 萩原典呼
世話をした甲斐あり実る夏の菜 橋本凉子
仲人を十組熟しでかい顔 大橋克己
お世話様ぷつんと言ってさようなら 大橋克己
要らぬ世話バンドの孔が怒りだし 長野峰明
一泊の世話を預かる孫の咳 古谷日出夫
文字を書く世話になってる再生紙 中本三桂
床ずれの一つもさせぬ嫁の意地 村上氷筆
横町のオヨネがタクト振りたがる 大栗智恵子
いらぬ世話やいて火傷の跡ばかり 樋口祐子
世話物髷物夫婦揃って時代劇 大橋克己
眼帯を外して見えた妻の世話 長野峰明
世話好きが過ぎて花芽が育たない 山本芳男
ほろ酔いの介抱したいひとといる 水田象介
世話になっているコンビニのおにぎり 沼尾美智子
セミが鳴く介護する方される方 水田象介
毛並つやつや話しかけてる馬の世話 村上静子
口上の長い隠居の世話の世話 増田左代子
世話好きの貴女の横は駆け抜ける 田中加津子
脇腹の肉もお世話になった谷 村岡義博
姑逝って介護の日日も淡くなる 小山紀乃
介護士へ人には言えぬ貼り薬 萩原典呼
御義姉さまお墓のお世話すみません 沼尾美智子
世話役の床几賑わう地蔵盆 椙元世津
鳥の世話みんな名前がつけてある 室田隆司
青空の世話をするのは誰でしょう 田中加津子
主人の世話はわたくしがいたします 上野多恵子
世話焼きがいない近所の子が荒れる 小島知無庵
世話役の今年も平凡が並ぶ 上野多恵子
頼られる幸せもあり世話もする 小阪信子
エプロンがいつも濡れてる世話女房 大栗智恵子
上方の味河庄の鴈治郎 室田隆司
これくらいの世話ならさせてもらいます 増田左代子
子の世話になる幸せの絵を選ぶ 古谷日出夫
世話好きな妻は自分を捨てている 山本芳男
早ようお食べ焼肉皿にのせてくれ 椙元世津
子の世話にならぬ夕陽を見て思う 前川千津子
老々介護風樹の嘆きだけ残る 赤井花城
熱の目を開けると夫がそばにいる 上村さな恵
地続きの最上階のぶどう棚 田中節子

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兼題  「素足」  長野峰明 選
二人して素足で駈けた浜がある 山本ひさゑ
足のうら踏む子の足が柔かい 椙元世津
タオルケットに可愛い素足生えている 坂本須磨代
アイドルの素足をガードする保険 竹内一人
足裏の火照りを冷やす洗面器 赤井花城
砂利ふんで素足の祈り深くなる 吉川千穂
素足にも採点がある海の家 山田蔦路
罪ひとつ許し足湯を梯子する 竹内一人
びちゃびちゃの足あと叱る夏休み 萩原典呼
母と子の素足へ夕日美しい 前川千津子
シンクロの足に目があるよに揃う 増田左代子
顔はダメわたくし素足美人です 上野多恵子
アテネ向く世界に引けをとらぬ足 村上氷筆
すててこと下駄で猛暑を乗り切ろう 大橋克己
すり足の老母の夜中を聞き届け 増田左代子
かじりたくなるよな赤ちゃんの素足 村上静子
無に浸るかたちで座禅組む素足 内田秀章
美しい素足を見せるコマーシャル 里嘉矩
敏感な素足が拾う床のゴミ 水上たお子
素足から地球の声をしかと聴く 山本芳男
ボサノバを踊る素足も歯も白し 赤井花城
スリットが微妙に素足隠してる 上原翔
ひらがなのよの字のように素足みせ 森山勝彦
土を踏む素足の生きてるってこと 田中節子
知名度が頼り素足のまま挑む 室田隆司
大根のような素足と言うてみる 樋口祐子
カラコロと弾むふたりの宿の下駄 みぎわはな
床上げの素足笑顔で踏む畳 内田秀章
ン十年水虫飼っている素足 村上氷筆
素足で走る痛みは母が知っている 上村さな恵
故郷の土を素足で踏んでみる 室田隆司
出直しを誓う素足踏みしめて 長島敏子
泣き砂のメロディー聴いてる素足 大栗智恵子
誰が来た素足で踏んだ跡がある 上野多恵子
靴ぬいで見栄も野心もない素足 古谷日出夫
故郷で素足の風を踏み締める 山本芳男
浴衣着た裾の素足に汗が引く 小島知無庵
無機質のすなに素足がよく喋る 吉川千穂
灼熱の砂は素足を躍らせる 坂下安伸
砂浜で水虫どもを焼いている 水田象介
素足で渡るここは女のもどり橋 上村さな恵
理屈より温い素足のひとと住む 上村さな恵
鼻緒切れた下駄ひっさげて来る素足 中西保子
ストッキング投げて爆発してる夏 増田左代子
男なら素足になれと父の檄 長野峰明

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兼題  「愛しい」  上野多恵子選 
一日中眺めていたいコレクション 小山紀乃
愛しさを百倍にするいい女 青木公輔
幻まだ愛しさ残る袖だたみ 山本ひさゑ
愛おしい女との距離が遠くなる 上月智恵子
愛しさが母の日記に書いてある 山本芳男
愛しくて憎たらしくて食べ盛り 赤井花城
移り香のハンカチ洗うこと出来ず みぎわはな
天の川愛しい娘はまだひとり 荒垣秋野
愛しさがまだ断ち切れぬ墓参り 里嘉矩
まだ帰らないでとビール買いに行き 内田秀章
指先が愛しい色に梅漬かる 増田左代子
しゅんしゅんと愛しい朝のお湯が沸く 荒垣秋野
お産した妻の手ぎゅっとありがとう 村上氷筆
可愛い孫をご近所に見せ歩く 萩原典呼
好きだから好きと言えます何度でも 竹内一人
愛しい人に何時まで続く長電話 橋本凉子
愛しくて電話の声を抱きしめる 中西保子
愛しさは口に出さぬが素振りから 森山勝彦
信じ切る円らな瞳には弱い 上原翔
寝たきりの姑がこの頃愛おしい 村上静子
片思い触れる物みな愛しくて 田中加津子
愛しいと憎いと三度繰り返す 山田蔦路
甲斐性のないのがいとおしい苦労 萩原典呼
愛し愛しと嫁に呪文をかけている 尾畑晴代
愛しさのかたち十年ごと変わる 村岡義博
何時からか私虜にした笑顔 長島敏子
ピノキオの愛しい鼻の絆創膏 増田左代子
節くれた手がいとしいと思う時 大栗智恵子
夢で逢う愛しい人は若いまま 森山勝彦
おばあちゃんへ誤字もかわいい孫の文 中西保子
家風には合うた嫁さん可愛がる 中本三桂
本当の真意愛しいのは貴方 吉川千穂
愛しいと告げたらふっと失せる影 赤井花城
愛しい人へ空けて待ってる薬指 内田秀章
旧漢字いとしいとしと甦る 室田隆司
記念樹へ愛しい日々が蘇る 前川千津子
愛しさは封書にふわり包みこむ 室田隆司
境界線を越えて愛しの矢が届く 上村さな恵
愛しくて小さい小さい母でした 小阪信子
愛しいと思はせぶりのサクランボ 坂下安伸
地球儀に愛しい人はただひとり 森山勝彦
愛しさも半分となり共白髪 樋口祐子
この月をあなたは何処で見てますか 長島敏子
単線の途中に愛しい駅がある 神田巳珠
二学期に愛しいあの子ゐなくなり 内藤夢彦
生まれくる愛しきものへびん貯金 沼尾美智子
想い出の古い順からみな愛し 赤井花城
愛しさが本気になっていく辛さ 上野多恵子

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兼題  「六甲」  村上氷筆 選
六甲を越えて有馬で忍ぶ恋 水田象介
空と海六甲の旅夢風船 荒垣秋野
六甲の山裾に住み子を成して 豊野光子
六甲の裾野を愛し離れない 森山勝彦
六甲の水冷んやりと贅尽くす 田中加津子
六甲越え厭わず廻る選挙カー 大橋克己
名代だと聞いた宮水お土産に 斎藤功
少しずつ沈む六甲アイランド 萩原典呼
ケーブルカー百万弗をひとりじめ 神田巳珠
トンネルの中で宮水元を汲む 小島知無庵
山脈に六甲おろし谺する 大栗智恵子
六甲の坂で余生の膝笑う 中本三桂
六甲が北風おさえ住む都 斎藤功
初めての縦走の日が縁でした 内藤夢彦
駅ホーム六甲嵐渦巻く日 みぎわはな
六甲の麓で永住するつもり 上野多恵子
六甲連山夏の男の詩がある 上村さな恵
六甲の裏でのどかに住んでます 室田隆司
甲山ここより西へ神戸の背 斎藤功
縦走をし遂げた夜のさわやかさ 内藤夢彦
裏六甲の麓が終の住処とは 尾畑晴代
海も見えかたや有馬も見える峰 椙元世津
夏が来てきらめく雲も六甲も 小山紀乃
縦走をやっと果たして有馬の湯 大橋克己
星空の六甲で聴くオルゴール 前川千津子
六甲山千のドラマの発信地 吉川千穂
六甲山脈うす墨色に暮れなずむ 村上静子
六甲の夜景見ながら過去未来 沼尾美智子
彼といてあじさい彩の六甲道 吉川千穂
復興を確と見ている六甲山 長島敏子
六甲を借景至福のマイホーム 内田秀章
丁字が辻から紫陽花愛でて天上寺 村岡義博
六甲の霧が言わせたプロポーズ 大栗智恵子
六甲の峰深深と月の蒼 橋本凉子
六甲を起点に夢を売り歩く 竹内一人
六甲を描くキャンバスが小さすぎ 山本芳男
六甲を登り汗には有馬待つ 坂下安伸
六甲の夜景が産んだ子どもです 室田隆司
シーボルトを偲ぶ六甲シチダンカ 村岡義博
六甲で地球の青さ確かめる 山本芳男
六甲の四季坂道を下りてくる 竹内一人
六甲と苦楽を共にした月日 橋本凉子
隠れ宿裏六甲に季の流れ 山本ひさゑ
六甲のこだまは一直線にくる 上野多恵子
ととや道徳川道にある哀史 村上氷筆

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兼題  「はるばる」  前川千津子選 
はるばる来たのに誰も相手にしてくれず 青木公輔
はるばると燕私は待つばかり 豊野光子
山を越え谷を渡って生きてきた 萩原典呼
叶えたい宇宙旅行の夢がある 小山紀乃
はるばると世界一周した手紙 田中加津子
はるばると行く程でなし白骨温泉 中西保子
遠距離の恋を見守る新幹線 長島敏子
はるばると来て憎まれている黄砂 山本芳男
黄砂くる遥か異国の風に乗り 長島敏子
火星から土地安いよとメール来る みぎわはな
波の華三日がかりの便り着く 山本ひさゑ
風抱いてはるばる逢いにくるおんな 吉川千穂
冥土の使い丁重に追い返す みぎわはな
オーディション田舎娘を駆り立てる 竹内一人
披露宴はるばると来た恋仇 上野多恵子
はるばると大きなアメリカンチェリー 水上たお子
切なさが一気につのるエアメール 長島敏子
船と汽車のりついで来たクラス会 村上静子
子どもらとはるばる来たなセピア色 斎藤功
はるばるの男爵薯をコロッケに 内藤夢彦
はるばるとあの人が来る古希の恋 前田久雄
はるばると帰って母の介護する 中本三桂
地平線めざし独りの旅なかば 上村さな恵
はるばると尋ねた里の無人駅 里嘉矩
朝日浴び地平線から来る希望 沼尾美智子
勝つことを信じてアテネ遠い国 山田蔦路
究極の憧れ大リーグに挑む 内田秀章
はるばると来た友も老い蝉しぐれ 橋本凉子
はるばるときた追伸にある重み 山本芳男
はるばると再度登った阿蘇の山 坂本須磨代
ふる里をはるばる連れて来た訛 長野峰明
遠来の友を待ってる花の部屋 大栗智恵子
はるばると無沙汰を詫びに父母の墓 橋本凉子
熊野古道を辿る夫婦の癒し旅 内田秀章
天国の友へ手紙を書いている 小山紀乃
鉛筆一本紋太さんへ出会う旅 上村さな恵
思い遣る旅のつばめの飛行距離 赤井花城
はるばるの友携帯は近い顔 椙元世津
乗り継いでまた乗継いで蕎麦掻を 沼尾美智子
はるばるとやって来たのは請求書 吉川千穂
津軽から薩摩に嫁がやって来た 水田象介
花豆の甘きパックのはるばる届く 田中節子
炎天の男はるばる会いに来る 樋口祐子
はるばると愚痴のお土産置いて行き 樋口祐子
はるばるとこの世の旅も後少し 荒垣秋野
地球まだ一周もせぬわが旅路 赤井花城
はるばると旅はるばるがまたつづく 前川千津子

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【出席者】 (順不同・敬称略)
長野 峰明 沼尾美智子 増田左代子 大栗智恵子 神田 巳珠 室田 隆司
内田 秀章 中本 三桂 豊野 光子 村上 静子 田中 節子 森山 勝彦
上村さな恵 長島 敏子 中西 保子 吉川 千穂 椙元 世津 村上 氷筆
田中加津子 小島知無庵 斎藤  功 内藤 夢彦 前川千津子 山田 蔦路
橋本 凉子 古谷日出夫 上原  翔 荒垣 秋野 尾畑 晴代 坂下 安伸
村岡 義博 水田 象介 上野多恵子 萩原 典呼 大橋 克己 里  嘉矩
樋口 祐子 赤井 花城

【投 句】
山本ひさゑ 水上たお子 みぎわはな 山本 芳男 前田 久雄 坂本須磨代
青木 公輔 上月智恵子 竹内 一人 小坂 信子

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