平成15年9月28日
神戸市勤労会館
今回のお題目(クリックするとそのテーマの川柳が表示されます)
(ラはラッキー賞)
特別席題 「灯」 毛利きりこ選
ラ |
百万ドルの夜景の中のひとりの灯 |
小山紀乃 |
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リストラに明かりまだらになる社宅 |
内田秀章 |
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戦時下の日記ひもとく秋灯下 |
仲田秀子 |
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ボクの行き先限りなく星空 |
田中節子 |
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消さないで僕の出所のその日まで |
倭玄海 |
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一斉に灯ってわっと喚声ルミナリエ |
中西保子 |
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門灯をともし帰らぬ妻を待つ |
富田隆司 |
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ご帰還に灯のカッと点くやな予感 |
上原翔 |
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秋灯下来し方語り合う夫婦 |
仲田秀子 |
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折鶴は褪せても平和の灯は消せぬ |
古谷日出夫 |
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街の灯が消えて人間つまらない |
山田蔦路 |
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仏壇の灯へ愚痴言うて寝る |
内田秀章 |
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灯は母に似ている響きかな |
前川千津子 |
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灯がつくとゴージャスになる応接間 |
御影静 |
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マンションの灯完売まだらしい |
椙元世津 |
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ヤバそうな会社だネオンが欠けている |
島田握夢 |
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蛍光灯ひと事に聞く米不作 |
沼尾美智子 |
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帰り道落日早く灯が点る |
小坂信子 |
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門灯も中も消されて鍵の音 |
水田象介 |
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祭の灯静かに消して秋終わる |
坂下安伸 |
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消し忘れたままで長途の旅に出る |
室田隆司 |
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街の灯を一望ビール一気飲み |
福島直球 |
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共稼ぎうちだけ灯りついてない |
村上静子 |
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母が癒えわが家に和む灯が点る |
古谷日出夫 |
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医療ミスゆらゆら揺れる仏の灯 |
樋口祐子 |
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家中の明かり灯して独り住む |
内田秀章 |
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不景気へかすかな灯りタイガース |
上野多恵子 |
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片思いの妄想窓の灯が消えた |
島田握夢 |
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ろうそくの闇で出会った神の影 |
室田隆司 |
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黄昏れて老々介護の灯がゆれる |
萩原皐月 |
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尾灯ゆらゆら未だ踏ん切りがつかずいる |
上村さな恵 |
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燈台の点す頃まで稼ぐ海女 |
坂下安伸 |
佳 |
街の灯は魔性田舎を空にする |
村岡義博 |
佳 |
釣瓶落とし以下同文の灯が点る |
大橋克己 |
佳 |
飲みこんだ失意も愚痴も灯の下に |
田中加津子 |
佳 |
上手い嘘が浮かばんのに明かり点いている |
島田握夢 |
佳 |
街の灯が揺れる答はまだ出せぬ |
長島敏子 |
人 |
灯明の前で落ち着くまで座り |
椙元世津 |
地 |
薄灯かり信じる人の掌をさがす |
前田久雄 |
天 |
灯を消してじっくり事情聞いてくれ |
上野多恵子 |
軸 |
真夜中にちょっと明るい無人駅 |
毛利きりこ |
兼題 「乗り物」 神田巳珠 選
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縄電車一人の男切り捨てる |
山本芳男 |
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乗り物が好きで楽しいひとり旅 |
山本さひゑ |
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ペタル踏む安いチラシに誘われて |
大栗ち恵子 |
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二人扶持ローカル線のにぎりめし |
山本ひさゑ |
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夫には強いが乗り物は弱い |
山本ひさゑ |
ラ |
助手席はあなた夕陽が燃えている |
長島敏子 |
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鈍行で気儘な旅がしてみたい |
小坂信子 |
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乗り物に弱い薬持参で旅に出る |
小坂信子 |
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ゆらゆらとレトロに揺れる人力車 |
室田隆司 |
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終電車仮面をぬいだ貌を垂れ |
森山勝彦 |
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シンプルに生きて車の無い暮らし |
上野智恵子 |
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乗り物は鈍行がよい老いの旅 |
仲田秀子 |
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悪役の構造にダンプカーがある |
藤本静港子 |
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遠花火銀河鉄道に乗り込んで |
田中加津子 |
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下取りのベンツばさっと値切られた |
上野多恵子 |
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雑魚なりの贅沢今日はバスツァー |
上村さな恵 |
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追突の事故におののくハイウエー |
倭玄海 |
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気掛かりが夜行列車の闇へとぶ |
坂下安伸 |
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保険だけしっかりかけて空の旅 |
福島直球 |
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素通りへ軽く神社を拝むバス |
椙元世津 |
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路面電車昭和の音が好きで乗る |
内田秀章 |
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さくら遊覧ゆるゆると摩耶のバス |
萩原皐月 |
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対向車へ合図を送るネズミ捕り |
小西慶子 |
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新車買うローンを組んで火の車 |
吉川千穂 |
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終電車ぐっすり眠り起こされる |
御影静 |
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案内もします京都の人力車 |
毛利きりこ |
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乗り継いで墓参りする無料パス |
小西慶子 |
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復員船故国が見えた日の歓喜 |
古谷日出夫 |
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車には金かけ家はワンルーム |
村上氷筆 |
|
新大臣へ根まわし済んだ乗用車 |
上野多恵子 |
|
りんご買い出し新設のバス路線 |
萩原皐月 |
|
駆け足で霊場巡るバスツァー |
内田秀章 |
佳 |
助手席で眠りほうける妻の頬 |
大橋克己 |
佳 |
コンバイン巧みに操作する八十坂 |
斉藤功 |
佳 |
新幹線喪服のままで往き来する |
藤本静港子 |
佳 |
手を貸しただらだら坂の車椅子 |
小山紀乃 |
佳 |
有難うのひと言添えてバスを降り |
古田日出夫 |
人 |
一輪車乗れたら渡る虹の橋 |
赤井花城 |
地 |
曲芸師もどきで孫の一輪車 |
村上静子 |
天 |
笹船の恋が港にたどり着き |
長野峰明 |
軸 |
時刻繰って楽しむひとり旅 |
神田巳珠 |
兼題 「沖」 小山紀乃 選
ラ |
幸せが見つかりそうで沖に出る |
水田象介 |
|
スーツ脱ぎ余生は楽し沖にいる |
村岡義博 |
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沖の船昨日も今日も動かない |
前川千津子 |
|
青年の帆は沖へ向く風孕む |
藤本静港子 |
|
港島又その沖へ滑走路 |
上原翔 |
|
丸い地球確かめたくて沖へ出る |
長野峰明 |
|
あんなとこへ錨下ろし何してるヨット |
島田握夢 |
|
名も知らぬ遊女の墓が沖を向く |
仲田秀子 |
|
平凡な主婦です沖に憧れる |
上野多恵子 |
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この辺でよかろう沖にゴミ流す |
室田隆司 |
|
沖漬けへ熱目一本追加する |
上原翔 |
|
やしの実の歌を届けてくれる沖 |
上村さな恵 |
|
沖遠く昭和の遺品残される |
増田左代子 |
|
沖に出る夫に保険たんと掛け |
水田象介 |
|
期待のせ沖へ沖へと出る小船 |
御影静 |
|
沖合に不安つのらす子の安否 |
倭玄海 |
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少年の思い汎くて沖へ漕ぐ |
坂下安伸 |
|
あの沖の果てにはきっとユートピァ |
長島敏子 |
|
引き返す勇気をくれた沖の波 |
山本芳男 |
|
沖へ沖へカモメは虹を追いながら |
長島敏子 |
|
朝焼けの沖を見つめる無表情 |
上野多恵子 |
|
沖はるか未来を誓い合うふたり |
萩原皐月 |
|
沖の火に追憶ひとつまただぶる |
森山勝彦 |
|
約束の沖から船が還らない |
山本ひさゑ |
|
平和ぼけ恥部を沖から覗かれる |
長野峰明 |
|
沖はるか拉致の怒りが届かない |
森山勝彦 |
|
人生の沖にむかって一直線 |
吉川千穂 |
|
わだつみの声も沖へと遠ざかる |
室田隆司 |
|
沖ゆく船愛するひとはもういない |
中西保子 |
|
かなしみを沈めて沖はもの言わぬ |
萩原皐月 |
|
逆風へ開き直って沖へ出る |
中本三桂 |
|
水平線わたしに出来る深呼吸 |
毛利きり子 |
|
沖にまだ返せぬあかり二つ三つ |
増田左代子 |
|
決心は寂しいものと沖の風 |
斉藤功 |
佳 |
上田敏訳少女期の沖に漂う |
沼尾美智子 |
佳 |
沖をみる五感になごむ無の時計 |
吉川千穂 |
佳 |
沖へ沖へ伸ばすひとつまみの国土 |
沼尾美智子 |
佳 |
沖へ沖へ流れて視界ゼロの愛 |
古谷日出夫 |
佳 |
沖からの風が運んでくる挽歌 |
御影静 |
人 |
原点を水平線に探す秋 |
毛利きり子 |
地 |
大波小波沖から答え流れつく |
大栗智恵子 |
天 |
片足は此岸において沖をみる |
村岡義博 |
軸 |
水墨の沖よ遥かに亡夫居て |
小山紀乃 |
兼題 「偶然」 上野野多恵子選
|
元カレに偶然根堀り葉堀り聞く |
中本三桂 |
|
偶然を必然にして恋一途 |
村上氷筆 |
|
夢心地君とペアーを組むなんて |
大橋克己 |
|
雲に乗っている偶然の使者 |
田中節子 |
|
偶然の出会いを演じまずお茶へ |
森山勝彦 |
|
偶然がつづき再会のシナリオ |
小山紀乃 |
|
偶然が二人を夢風船にのせ |
萩原皐月 |
|
偶然と言うが予兆はみな認め |
福島直球 |
|
予期しないドラマを拾う旅に出る |
御影静 |
|
偶然を信じあなたを待つメトロ |
長島敏子 |
|
偶然の悪戯が好きキューピット |
赤井花城 |
|
偶然の出会い生涯続く縁 |
椙元世津 |
|
氣まぐれな神が結んでくれた糸 |
藤本静港子 |
|
偶然か今月今夜バースデー |
樋口祐子 |
|
偶然の振りで待ってる交差点 |
長島敏子 |
|
偶然に逢い必然に子が出来る |
水田象介 |
|
偶然の道連れとなる自爆テロ |
長野峰明 |
|
蛇の道はヘビ、ライバルの尾を掴む |
竹内一人 |
|
呑んでいるうちに同郷だとわかり |
村上静子 |
|
偶然を願って今朝も回り道 |
仲田秀子 |
|
お互いにたまたまですとすれ違い |
竹内一人 |
|
偶然か別れた妻も乗るツァー |
倭玄海 |
|
古里の同じ上司に氣を許す |
毛利きり子 |
|
ハプニングばかり続いて疲れる日 |
赤井花城 |
|
知らぬ娘にあいさつされてから悩む |
室田隆司 |
|
偶然をストーカーかと怪しまれ |
中西保子 |
|
芸術と絵筆の滴ほめられる |
斉藤功 |
|
偶然と借金取りが寄ってくる |
斉藤功 |
|
席替えてほしいおんなじ柄が横 |
室田隆司 |
|
昼めしのおかずが家とよくダブる |
上原翔 |
|
偶然に拾った運だすぐ尽きる |
室田隆司 |
ラ |
偶然のふりして父が嫁に触れ |
内田秀章 |
佳 |
余りの偶然へほんまにほんまやと必死 |
島田握夢 |
佳 |
偶然にのぞいた本が背中押す |
沼尾美智子 |
佳 |
偶然を受け止める左手明けておく |
藤本静港子 |
佳 |
偶然が重なり湧いてくる疑念 |
竹内一人 |
佳 |
偶然に故郷は同じの藷の蔓 |
坂下安伸 |
人 |
身形に差があり偶然へ声掛けず |
島田握夢 |
地 |
偶然を見逃しはせぬ科学の目 |
村岡義博 |
天 |
合格を偶然と言う師の瞳 |
樋口祐子 |
軸 |
生年月日名前も同じとは恐い |
上野多恵子 |
兼題 「やっぱり」 藤本静港子選
|
値上がりへ煙草やめると言うたのに |
島田握夢 |
|
美しい妻はやっぱり金を食う |
内田秀章 |
|
不一致の離婚一年とは悲し |
前川千津子 |
|
やっぱりと思う別れを言う背中 |
長島敏子 |
|
会う予感して出てみるとやっぱりね |
小坂信子 |
|
山籠りやっぱり街の灯が恋し |
福島直球 |
|
真夜中の地震やっぱり目が冴える |
小山紀乃 |
|
見通しのの甘さを風は知っていた |
上月智恵子 |
|
やっぱりを信じた夜の茶のうまさ |
山本芳男 |
|
見ててごらんいつもあそこで転びはる |
上野多恵子 |
|
やっぱりね人さわがせな忘れ物 |
小山紀乃 |
|
やはりオレの息子植木屋の弟子になる |
田中節子 |
|
叱られてもやっぱりママに抱かれたい |
毛利きり子 |
|
ほんまに呑んでないの妻嗅ぎにくる |
島田握夢 |
|
やっぱ同郷だつたアクセントでわかる |
中西保子 |
|
二番目もやっぱり妻に似て美人 |
仲田秀子 |
|
フルコースやつぱり父に箸が要る |
沼尾美智子 |
|
二度の職ハンコやっぱり小さくする |
森山勝彦 |
|
翌日はやっぱりという雨女 |
椙元世津 |
|
本家本元蹴鞠に強い日本人 |
大橋克己 |
|
耳たぶの薄さやっぱり亡母に似る |
上村さな恵 |
|
やっぱりね本気の恋に酔っている |
吉川千穂 |
|
やっぱりだ娘のケイタイに影がさす |
中西保子 |
|
普通の男やったと当たり前のこと言われ |
島田握夢 |
|
山を越えてもやはり木枯しの村 |
田中節子 |
|
柿や栗やっぱり私秋が好き |
萩原皐月 |
|
やっぱりねとっくに冷めていたんだね |
田中節子 |
|
やはり母だ腹巻きが届いた |
田中節子 |
|
反骨の旗はやっぱり降ろせない |
斉藤功 |
|
裏からの風がやっぱりきな臭い |
古谷日出夫 |
|
四度目はやはり仏も渋い顔 |
長野峰明 |
|
寸劇のうそをやっぱり見抜いてる |
中本三桂 |
佳 |
告白をやっぱりギャグで逃げられる |
大栗ち恵子 |
佳 |
ほっぺたをつねるとやはり夢だった |
赤井花城 |
佳 |
約束はやっぱり軽い人でした |
椙元世津 |
佳 |
若返りしても無駄です声の艶 |
大橋克己 |
佳 |
いい過ぎた言葉が責めてくるやはり |
御影静 |
人 |
信じたくなかった噂だったのに |
赤井花城 |
地 |
やっぱりを何度積んでも出ぬ答え |
長島敏子 |
天 |
風見鶏やはり敵には背を見せぬ |
長野峰明 |
軸 |
ピリオドを打つのはやっぱり女から |
藤本静港子 |
【出席者】 (順不同・敬称略) |
室田 隆司 |
上原 翔 |
前田 久雄 |
小山 紀乃 |
小坂 信子 |
神田 巳珠 |
毛利きりこ |
森山 勝彦 |
上村さな恵 |
中西 保子 |
内田 秀章 |
長島 敏子 |
長野 峰明 |
仲田 秀子 |
前川千津子 |
増田左代子 |
倭 玄海 |
田中加津子 |
小島 知無 |
古谷日出夫 |
斎藤 功 |
沼尾美智子 |
椙元 世津 |
坂下 安伸 |
小西 慶子 |
上野多恵子 |
御影 静 |
萩原 皐月 |
藤本静港子 |
田中 節子 |
大橋 克己 |
水田 象介 |
福島 直球 |
村岡 義博 |
山田 蔦路 |
島田 握夢 |
村上 静子 |
吉川 千穂 |
樋口 祐子 |
赤井 花城 |
【投 句】 |
村上 氷筆 |
中本 三桂 |
大栗 恵子 |
竹内 一人 |
山本ひさゑ |
上月智恵子 |
山本 芳男 |
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