平成14年5月19日
神戸市勤労会館
今回のお題目(クリックするとそのテーマの川柳が表示されます)
(ラはラッキー賞)
特別席題 「喋る」 岩田勢津子選
ラ |
看護婦さんが喋ってくれる試歩の道 |
泉比呂史 |
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喋らない男が二人隅に居る |
山田蔦路 |
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無口の父が精一杯のご挨拶 |
古谷日出夫 |
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愛子さまのニュースへ手話の手がはずむ |
古谷日出夫 |
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お喋りを聞いてた人が昼告げる |
前川千津子 |
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よく喋る嫁姑の煮ころがし |
増田左代子 |
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おひまなら喋りましようか寡婦どうし |
仲田秀子 |
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あのお喋りが無口になった恋の道 |
大橋克己 |
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うつの日は薬よりきく長電話 |
仲田秀子 |
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ひそひそと日陰の花が喋る午後 |
内田秀章 |
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熱燗で喋り上手になる男 |
長島敏子 |
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よく喋る今夜の夫に何かある |
古谷日出夫 |
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信号は赤よと喋る犬相手 |
椙元世津 |
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よく喋る女と隣のバスの中 |
坂下安伸 |
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喋りだしたらもう止まらない生ビール |
沼尾美智子 |
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井戸端会議となりの内情までわかる |
中西保子 |
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よく喋る女の仕草見て飽きず |
御影静 |
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安全な椅子にいるのがよく喋る |
山中忠 |
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妻よく眠り鱈腹喰って良く喋り |
倭玄海 |
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おしゃべりが過ぎて嵐の真ん中で |
長島敏子 |
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よく喋る男は少うし苦手です |
長島敏子 |
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ここからは酒が出ないと喋れない |
内田秀章 |
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落語家の喋る言葉に無駄がない |
森山勝彦 |
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無愛想二日おくれで喋りだす |
山田蔦路 |
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指切りの誓いを破る噂好き |
中西保子 |
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拡声器背中にしょって井戸端へ |
内藤忠彦 |
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誉められて花は自由に喋りだす |
山中忠 |
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延々と喋る渇いていくこころ |
田中節子 |
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内緒だと言った自分はよく喋り |
坂下安伸 |
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クラス会喋り明かして無に還る |
沼尾美智子 |
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再会に言葉はいらぬ目を合わす |
樋口祐子 |
佳 |
お喋りが止んだおずおず手を握る |
村上氷筆 |
佳 |
妻と朝から一言も喋っていない |
水田象介 |
佳 |
不器用に喋るおとこにほだされる |
御影静 |
佳 |
枝豆の嵩に喋った後がある |
泉比呂史 |
佳 |
津軽と薩摩弁の見合い始まる |
水田象介 |
人 |
突然にご指名されてよく喋る |
井元照夫 |
地 |
三十秒だまれと無理な事を言う |
青木公輔 |
天 |
やっぱりね母は受話器の前にいる |
吉川千穂 |
軸 |
喋り方亡母に似てきた姉の顔 |
岩田勢津子 |
兼題 「味」 沼尾美智子選
|
ひとつまみジョークを足した味にする |
小山紀乃 |
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勘定をしながらなめる酒の味 |
中本三桂 |
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味のある和解に親の持つ不安 |
坂下安伸 |
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ひと言が重い味わい深い皺 |
長島敏子 |
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傷口を見せ合いそれからの味方 |
田中節子 |
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永らえて今かみしめる恋の味 |
樋口祐子 |
ラ |
ファーストミット優勝の味知っている |
大橋克己 |
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旬の味だダイエットは明日から |
森山勝彦 |
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辛口と甘口使い分け生きる |
赤井花城 |
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味覚音痴だまずい物はなにもない |
尾畑晴代 |
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旅土産無添加無着色を選る |
赤井花城 |
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人に疲れて甘納豆をふたつ三つ |
長島敏子 |
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傷ついた過去は語らぬ母の味 |
吉川千穂 |
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味気ないとたまには思う日暮れどき |
椙元世津 |
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無味無臭あなたの味になりたいの |
みぎわはな |
|
チンドン屋のリズムで味はほぼ判る |
青木公輔 |
|
私の味であなたを煮ころがす |
みぎわはな |
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おいしかったよその一言の思いやり |
村上氷筆 |
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妻の評あなたひとりの味ある絵 |
斎藤功 |
|
漬け物嫌いが糠床任される |
水田象介 |
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出涸らしの人間いますのほほんと |
増田左代子 |
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遠い日の軌跡をたどる母の味 |
杉山清流 |
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のんびりの脳に激辛調味料 |
上村さな恵 |
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美しい嘘を飲みほす人間味 |
山中忠 |
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カルピスの味を忘れてから久し |
泉比呂史 |
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公園で食べると空も味を添え |
斎藤功 |
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枇杷丸くゆつくりと剥き旬の味 |
椙元世津 |
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調味料なんにも要らぬ恋の味 |
長野峰明 |
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味見する指へ夫も帰るころ |
泉比呂史 |
|
晩年がだいじ茶粥の味を知る |
田中節子 |
|
味を取るか量を取るか迷ってる |
水田象介 |
佳 |
アングルを変えれば味な顔に逢う |
山中忠 |
佳 |
さりげなくスパイス効かす粋な方 |
内藤忠彦 |
佳 |
生きてきた答えの顔で味がある |
御影静 |
佳 |
揉めごとも丸く修めた人間味 |
椙元世津 |
佳 |
どうしても渋味が出ないぼくの顔 |
森山勝彦 |
人 |
僕の味スーツの裏に忍ばせて |
内藤忠彦 |
地 |
味があるなんてわくわくする言葉 |
山中忠 |
天 |
たまゆらの酔生夢死の酒の味 |
赤井花城 |
軸 |
わら半紙なみだの味を忘れない |
沼尾美智子 |
兼題 「師」 倭玄海 選
|
美容師の妻に夫は湯を沸かす |
坂下安伸 |
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師のその後たずね落葉の道あるく |
泉比呂史 |
|
クラス会恩師の綽名温まる |
坂下安伸 |
|
息子のおごり海正面に漁師鍋 |
田中節子 |
|
はつなつの風は師の声師の香り |
田中節子 |
|
クラス会恩師が敬語使ってる |
森山勝彦 |
|
お師匠がハンサムだからすぐとちる |
沼尾美智子 |
|
先生に見とれてペンが進まない |
沼尾美智子 |
|
今時の師の影うすく踏む生徒 |
内藤忠彦 |
|
同窓会お招きする師いなくなり |
内藤忠彦 |
|
口癖にこれが最後という恩師 |
小西慶子 |
|
一筆箋こころ添え来る師の温み |
小西慶子 |
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蛸壷を恨めしそうに見る漁師 |
樋口祐子 |
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師も父も時々夢で会うばかり |
赤井花城 |
|
師の影を踏めそうでまだ追い付けぬ |
赤井花城 |
|
生享けてたった一人の師と呼ぶ名 |
赤井花城 |
|
いつの日も身のそばにおく師のおしえ |
仲田秀子 |
|
教え子が手伝って師の絵の個展 |
中本三桂 |
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祭りずし亡姑は師でありライバルで |
山本ひさゑ |
|
慕われて僻地に生きる女医師 |
仲田秀子 |
|
お師匠さんが美人だそうな習いに行こ |
みぎわはな |
|
先達が法螺貝鳴らす修験道 |
大橋克己 |
|
珍質問真面目な教師困らせる |
福島直球 |
|
自分史を語るに重い師の教え |
御影静 |
|
無視されているね牧師もみの虫も |
青木公輔 |
|
後輩に恵まれている師は讃え |
椙元世津 |
|
初大師互いに歳をとりました |
長島敏子 |
|
恩師よりも毛が薄くなり敬語やめ |
水田象介 |
|
社の机上僕を操る傀儡師 |
増田左代子 |
|
師と呼ばれ予習復習欠かされず |
近藤嘉宏 |
|
師の歳を越えた自分が内責める |
近藤嘉宏 |
|
新任の先生チョークがよく折れる |
井元照夫 |
佳 |
孤独にはさせぬ師匠の握り飯 |
山中忠 |
佳 |
大師堂女が過去を捨てに来る |
長島敏子 |
佳 |
当世は師の恩さえも死語になる |
中西保子 |
佳 |
師の影の余りにうすく踏めもせず |
長野峰明 |
佳 |
初恋は先生でした花菖蒲 |
中西保子 |
人 |
師の影の踏まれ長なが花の闇 |
山本ひさゑ |
地 |
身の丈に合わせてくれた師の温さ |
山中忠 |
天 |
頷いた石の痛さを師とせむか |
長野峰明 |
軸 |
紋太師を知らぬ世代もいる句会 |
倭玄海 |
兼題 「技」 村上氷筆 選
|
いつも来る小鳥に好きな枝があり |
福島直球 |
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枝豆に奴があればおらが夕 |
斎藤功 |
|
木洩れ日の枝にわずかな幸せもらう |
中本三桂 |
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病む嫁へ桜の小枝を枕辺に |
荒垣秋野 |
|
あの枝一本伐りたいひと他人の庭 |
山田蔦路 |
|
一枚の音符の中の枝豆よ |
青木公輔 |
|
銀杏の葉折りに少女読書好き |
井元照夫 |
|
ストレスが溜まれば枝をバッサリと |
岩田勢津子 |
|
みくじ吉結ぶ背丈の枝を選る |
増田左代子 |
|
生臭い枝が張り合いする妬心 |
古谷日出夫 |
|
枝葉だけ伐って悪の根よく肥り |
みぎわはな |
|
よく晴れて枝から枝へ小鳥舞う |
山田蔦路 |
|
枝葉より国の面子に苦労する |
坂下安伸 |
|
徒長枝を掟破りのように剪る |
近藤嘉宏 |
|
信楽の壷に合わせて曲げる枝 |
長島敏子 |
|
枝払い車椅子置く五月晴れ |
荒垣秋野 |
|
挿し芽した枝がすんなり天を向く |
上村さな恵 |
|
枝先にトカゲは哀れモズの贄 |
斎藤功 |
|
朝毎に小鳥老樹に歌きかせ |
みぎわはな |
|
枝道を迷う人生裏通り |
小山紀乃 |
|
タイトルバック今紫陽花の真っ盛り |
大橋克己 |
|
岩松の潮風舐めた枝の佳さ |
長野峰明 |
|
楊枝くわえ娘の縁談に父寡黙 |
井元照夫 |
|
いくとせの連理の枝にみる絆 |
中西保子 |
|
梅の枝ぱっさり切って愛おわる |
樋口祐子 |
|
枝豆で話すと噂よくつづく |
泉比呂史 |
|
墜とされた枝の悲鳴を聴を逃がす |
山本ひさゑ |
|
枝わかれとても苦手なパラサイト |
沼尾美智子 |
|
留守の部屋へひと枝挿している証 |
山本ひさゑ |
|
ばっさりと枝切り邪心ふりほどく |
御影静 |
|
枝分かれ枝分かれして女系の譜 |
赤井花城 |
佳 |
五月雨に枝重くなる結び文 |
荒垣秋野 |
佳 |
大空へ梢がとどきそうな朝 |
小山紀乃 |
佳 |
ひと枝を払って一つの愛を断つ |
山中忠 |
佳 |
冬芽かすか枝の命が透けてくる |
山本ひさゑ |
佳ラ |
枝のさき思案しているかたつむり |
御影静 |
人 |
どの枝も陽を向く森のさんざめき |
小山紀乃 |
地 |
枝を折る仕草ひとつの賭けとして |
青木公輔 |
天 |
話しかけるかたちで伸びてきた小枝 |
御影静 |
軸 |
巣立ちした小鳥小枝で母を喚ぶ |
村上氷筆 |
兼題 「日」 泉比呂史 選
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日々平和枕を高くして眠る |
中本三桂 |
|
若さにはもう戻れない日の焦り |
御影静 |
|
笑う日も泣く日も神に感謝する |
中本三桂 |
|
肝機能検査の日にも誘い来る |
斎藤功 |
|
ママの紅今日はうれしい入園日 |
杉山清流 |
|
慶びも淋しくなる日娘は嫁ぐ |
坂下安伸 |
|
過ぎし日の亡妻と見紛う娘の晴れ着 |
倭玄海 |
|
ゆうパックで届く母の日のカーネーション |
近藤敦子 |
|
日柄など選っておるほど無い余白 |
長野峰明 |
|
毎日を日曜日にする穴がある |
近藤嘉宏 |
|
朝からの失敗今日は日が悪い |
椙元世津 |
|
待つことは恋うこと日数指折る手 |
赤井花城 |
|
またの日は約束しない能登の風 |
樋口祐子 |
|
この町でつま夫の復員待った日々 |
仲田秀子 |
|
楽天下明るい日々を持ち歩く |
古谷日出夫 |
|
月日足早指輪の跡が消えてゆく |
長島敏子 |
|
日日新た時計は明日を指している |
荒垣秋野 |
ラ |
一日を海に溶かしてゆく夕陽 |
御影静 |
|
忙しい日々のお洒落も怠れず |
前川千津子 |
|
母の日へ詫びることあり白い花 |
坂下安伸 |
|
お日柄もよろしいようで籤を買う |
沼尾美智子 |
|
手弱女も月日をかさね強くなり |
内藤忠彦 |
|
なにごともなかった厄日暮れて行く |
山田蔦路 |
|
日々を織る母はすべての傷を抱き |
山田忠 |
|
休肝日悪い人から誘い来る |
福島直球 |
|
単調なくらし楽しい日が混ざる |
前川千津子 |
|
きっちりと日課をこなし飢えている |
御影静 |
|
日当たりの良さ新築で背のびする |
中西保子 |
|
明日散る花に声かけ水をやる |
内田秀章 |
|
悔いのない一日でしたあかり消す |
仲田秀子 |
佳 |
平穏な月日に果実酒が熟す |
内田秀章 |
佳 |
風雪の日々しみじみと春炬燵 |
沼尾美智子 |
佳 |
何もせねば何も変わらぬ日が昏れる |
みぎわはな |
佳 |
月下美人咲いて昨日はふり向かぬ |
上村さな恵 |
佳 |
青信号いつかは出遇う挫折の日 |
山本ひさゑ |
人 |
年輪のあの日この日にある記憶 |
上村さな恵 |
地 |
飢えた日のパン一切れが風化する |
山中忠 |
天 |
持ち越した涙が今日も渇かない |
長島敏子 |
軸 |
許されるときまで壁と日をすごす |
泉比呂史 |
【出席者】 (順不同・敬称略) |
山田 蔦路 |
井元 照夫 |
長野 峰明 |
近藤 嘉宏 |
近藤 敦子 |
青木 公輔 |
中西 保子 |
尾畑 晴代 |
神田 巳珠 |
森山 勝彦 |
増田左代子 |
沼尾美智子 |
上村さな恵 |
倭 玄海 |
杉山 清流 |
前川千津子 |
大橋 克己 |
小西 慶子 |
長島 敏子 |
古谷日出夫 |
斎藤 功 |
村上 氷筆 |
山中 忠 |
仲田 秀子 |
坂下 安伸 |
椙元 世津 |
内田 秀章 |
田中 節子 |
吉川 千穂 |
岩田勢津子 |
内藤 忠彦 |
御影 静 |
みぎわはな |
泉 比呂史 |
福島 直球 |
水田 象介 |
新里 俊郎 |
樋口 祐子 |
赤井 花城 |
【投 句】 |
山本ひさゑ |
中本 山桂 |
小山 紀乃 |
荒垣 秋野 |
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