平成13年1月21日
神戸市勤労会館
今回のお題目(クリックするとそのテーマの川柳が表示されます)
(ラはラッキー賞)
特別席題 「一月雑感」 沼尾美智子 選
|
招かざる雪で疲れがどっと出る |
中本三桂 |
|
はじまりの雲新春の水たまり |
伊佐次無成 |
|
深夜テレビの観すぎから風邪をひき |
水田象介 |
|
震災を風化させない多くの灯 |
前川千津子 |
|
弾き初めの琴の音妻も若う見え |
橋本衛門七 |
|
凧揚げも追羽子ももう郷愁か |
水田象介 |
ラ |
十日夷の餅投げ三つ拾ったよ |
尾畑晴代 |
|
福笹を値切って買った残り福 |
村上静子 |
|
冬枝に小さい拳が天を突く |
萩原皐月 |
|
ぜんざいの中で泳いだ鏡餅 |
吉川千穂 |
|
初笑い祖母のミクジにおとこ運 |
小西慶子 |
|
成人式おとなの掟破り初め |
黒嶋海童 |
|
センター試験力を信じ仏を信じ |
田中節子 |
|
寒椿恋は終わりの便り来る |
山田蔦路 |
|
慰霊祭背を低くして祈るのみ |
田中要保 |
|
雪のないお正月です仏様 |
長島敏子 |
|
しきたりの父から渡すお年玉 |
泉比呂史 |
|
初荒神へ誘われて行き風邪をひき |
村上静子 |
|
邪気払う柏手バンと強く打つ |
瀬川凪子 |
|
厨から七草のうた母八十路 |
仲田秀子 |
|
寒海鼠父の見立てで市場籠 |
大橋克己 |
|
一月の人間嫌いの旅続く |
山田蔦路 |
|
賀状から今年の運を捜しだす |
泉比呂史 |
|
一坪の庭にも照らす初日の出 |
山中忠 |
|
とろろ飯皆が好きで一升釜 |
大橋克己 |
|
正月は要らん要らんと母よく動き |
伊佐次無成 |
|
梅未だ夫婦無言の日向ぼこ |
橋本衛門七 |
佳 |
昔はちごたと延びない餅食べる |
島田握夢 |
佳 |
幸運な暮らし春から水がある |
山中忠 |
佳 |
新春の歳は要らない酒をくれ |
長野峰明 |
佳 |
雪しきり小さいいのち無事還る |
黒嶋海童 |
佳 |
風邪ひいた顔も来ているとんど焼き |
泉比呂史 |
人 |
画布青く独り立ちする春の舞い |
上村さな恵 |
地 |
コタツから首出して流氷の話 |
島田握夢 |
天 |
まだ山を動かす夫に屠蘇を注ぐ |
吉川千穂 |
軸 |
成人式はるか彼方に粛々と |
沼尾美智子 |
兼題 「流動物」 黒嶋海童 選
|
喉元に管の刺されている命 |
村上氷筆 |
|
缶詰の流動物がよく喋る |
山本ひさゑ |
|
株式の上がり下がりも気にならず |
椙元世津 |
|
流動物のようで誠のある男 |
井元照夫 |
|
少し狂った時計の音に救われる |
吉川千穂 |
|
わたくしへ帰れる野菜ジュースだ |
田中節子 |
|
アメーバになってあなたの中に棲む |
みぎわはな |
|
花嫁のライスシャーに笑み浮かぶ |
藤川芳醇 |
|
ありがたい口から食べる物の味 |
瀬川凪子 |
|
紙風船ふわり駄菓子屋のラムネ |
竹信与志夫 |
|
粕汁をこさえ木枯らし遣り過ごす |
沼尾美智子 |
|
新車買い妻の試乗に背が寒い |
倭玄海 |
|
意見出す前にひとくちお茶を飲み |
椙元世津 |
|
故郷の川の流れにいたメダカ |
吉川千穂 |
|
一丁の逆櫓と流れゆく命 |
赤井花城 |
|
ケチャップのハートが続く手弁当 |
小西慶子 |
|
ローソクの燃ゆる狭間のラブソング |
小西慶子 |
|
大ジョッキ戦士の貌が解けてゆく |
山中忠 |
|
寝て食べる笑顔へスプーン待っている |
前川千津子 |
|
噴火したわたしから誰も逃げられぬ |
みぎわはな |
|
重油まみれの海鳥たちよ生きてるか |
赤井花城 |
ラ |
僕の財布に流動物が居付かない |
長野峰明 |
|
冷酒をあおる面影捨てたくて |
長島敏子 |
|
僕の時計にあんな値段が付く質屋 |
島田握夢 |
|
蛇口から湖水の声が聞こえ来る |
樋口祐子 |
|
美しく死に度い賑やかなコーヒー |
田中要保 |
|
一匙で輝きもらう離乳食 |
瀬川凪子 |
佳 |
一期一会ワイングラスにきく炎 |
竹信与志夫 |
佳 |
熱燗へ職場のぐちも溶けていく |
椙元世津 |
佳 |
トマトジュースごくりと冬に立ち向かう |
泉比呂史 |
佳 |
回転ずしちょっと眺めてガリを取る |
樋口祐子 |
佳 |
フランスの小咄ココアを飲みながら |
萩原皐月 |
人 |
芋粥の底まで舐めた疎開の児 |
みぎわはな |
地 |
チューハイに無題の喜劇きくピエロ |
竹信与志夫 |
天 |
尾灯流れて愛が始まる予感する |
上村さな恵 |
軸 |
円安も株価も見ずに畠を打ち |
黒嶋海童 |
兼題 「温い」 尾畑晴代 選
|
かじかんだ手にオンドルの火が招く |
藤川芳醇 |
|
みな脆き命の絆温め合う |
赤井花城 |
|
肉筆にぬくみ伝わる年賀状 |
荒垣秋野 |
|
さりげなく肩におかれた手の温み |
仲田秀子 |
|
ただいまの顔を土鍋の湯気が包む |
みぎわはな |
|
今停めた車の下にもぐるネコ |
村上氷筆 |
|
寒波襲来妻がくっついてくるベッド |
島田握夢 |
|
甘酒にひと息ついて京巡り |
上村さな恵 |
|
万歩計温い炬燵に今日も負け |
斎藤功 |
|
手抜きの愛かほかほか弁当持たされる |
花田俊枝 |
|
住み慣れて馴染みの家具に囲まれる |
小山紀乃 |
|
四面楚歌こんなにぬくい掌に出合う |
上月智恵子 |
|
紅葉の手つないで温い初歩き |
小西慶子 |
|
不器用だが父の大きな掌が温い |
山本ひさゑ |
|
会話が温い2DKは南向き |
萩原皐月 |
|
人肌の燗を覚えた嫁の指 |
大橋克己 |
|
時時の親子の会話温い風 |
吉川千穂 |
|
一枚の葉書が温いものを呉れ |
椙元世津 |
|
ざらついた老母の手ほんわかと温い |
村上静子 |
|
父のふところぬくい焼き芋がいくつ |
中西保子 |
|
港町温い風あり住み馴れる |
中本三桂 |
|
クールでも温い言葉を持っている |
前川千津子 |
|
ボロクソに言うても温い鬼瓦 |
長野峰明 |
|
温い手を拒んで自閉症になる |
中本三桂 |
|
土壇場で差し出す愛の手が温い |
中本三桂 |
|
温い葉書一枚持つと生きられる |
泉比呂史 |
ラ |
一言の温い言葉で頑張れる |
瀬川凪子 |
佳 |
ポケットに鯛焼きがあり帰路急ぐ |
橋本衛門七 |
佳 |
湯タンポのような女で頼られる |
井元照夫 |
佳 |
手が温いもう一度だけ信じよう |
長島敏子 |
佳 |
幸せを語ると温い風も吹く |
吉川千穂 |
佳 |
縁側でわが股間には猫が寝て |
水田象介 |
人 |
風邪に臥す妻に無骨な卵がゆ |
みぎわはな |
地 |
薄情な男のくせに手は温い |
黒嶋海童 |
天 |
あと五分あと五分だけ冬の寝間 |
水田象介 |
軸 |
温い手の握手に戸惑いをかくす |
尾畑晴代 |
兼題 「ルール」 山田蔦路 選
|
花も反発ルール通りに咲きません |
椙元世津 |
|
僕のルールで時計を五分すすませる |
尾畑晴代 |
|
人名もルールも無視して若年層 |
井元照夫 |
|
ふるさとの風呂の順序は変わらない |
泉比呂史 |
|
審判の判定よりもみんなの眼 |
藤川芳醇 |
|
意地張れとルールブックに書いてない |
島田握夢 |
|
一人だけルール外れて編むセーター |
中西保子 |
|
免許証真っ白にして生きている |
山中忠 |
|
秘めた恋ルールはずれた街で炎え |
みぎわはな |
|
ルール違反百足の足がもつれだす |
樋口祐子 |
|
季節はずれに咲きたい時もある野ばら |
長島敏子 |
|
ルール違反そこから変わる風の向き |
上月智恵子 |
|
ルールなどないおばさんの四人連れ |
黒嶋海童 |
|
人間の作るルールに泣かされる |
樋口祐子 |
|
罰金を払いルールにある不満 |
中本三桂 |
|
ルール無視花は時々狂い咲く |
田中要保 |
|
信号の赤を気付かぬとは愉快 |
前川千津子 |
|
ルールなどどこ吹く風の十七歳 |
吉川千穂 |
|
金属バットが叩くルールの的外れ |
長野峰明 |
|
大物のルール違反は藪の中 |
村上氷筆 |
|
街角にルール横目に捨てたゴミ |
倭玄海 |
|
許しすぎていないか十七歳のルール |
泉比呂史 |
|
ルールから外れる方が難しい |
椙元世津 |
|
ルールから外れて首が軽くなる |
御影静 |
|
家中でルールをきめて仔犬飼う |
村上静子 |
|
今日も又妻のルールで米をとぐ |
尾畑晴代 |
|
すべり台へ並ぶ園児にあるルール |
村上静子 |
|
極道にルールがあって切る仁義 |
橋本衛門七 |
佳 |
ルールには無かった愛の廃止線 |
上村さな恵 |
佳 |
法律の死角でルール違反する |
中本三桂 |
佳 |
シルバーシートのルールに甘えてはならぬ |
泉比呂史 |
佳 |
アドリブに馴れてルールに蹴躓く |
山中忠 |
佳 |
押しつけのルールと若い者騒ぐ |
椙元世津 |
人 |
人間のために信号点滅する |
前川千津子 |
地 |
生真面目なこぶしでルール破れない |
長島敏子 |
天 |
そのルールもう古すぎじゃないですか |
瀬川凪子 |
軸 |
きっちりとしなはれルールありまんねん |
山田蔦路 |
兼題 「男と女」 泉比呂史 選
ラ |
優しすぎたか低温火傷した二人 |
竹信与志夫 |
|
結局は平行線と知る男女 |
村上氷筆 |
|
好き嫌い背中合わせでいる夫婦 |
倭玄海 |
|
マリオネットに男操る白い指 |
黒嶋海童 |
|
美しい男と女薔薇が好き |
前川千津子 |
|
手をつなぐ平行線上の男女 |
荒垣秋野 |
|
ネオン街おんなは耳で恋をする |
花田俊枝 |
|
海原に風も出るころ男と女 |
田中節子 |
|
まだ男まだ女とて舞う命 |
赤井花城 |
|
男はいくさ女は愛に身を削る |
萩原皐月 |
|
男は明日を女は今日を考える |
尾畑晴代 |
|
妥協して男と女の池が澄む |
萩原皐月 |
|
透明になって男女は繭になる |
荒垣秋野 |
|
お似合いと我が両親を想うなり |
椙元世津 |
|
たそがれの街で夫へ好きな服 |
樋口祐子 |
|
片想いいつまで続く石畳 |
山中忠 |
|
もう少しおんなでいたい男達 |
吉川千穂 |
|
男と女あって地球が丸くなる |
長野峰明 |
|
赤とんぼ唄う夫婦へ子が巣立つ |
前川千津子 |
|
雄々しさも女々しさも消え新世紀 |
沼尾美智子 |
|
相性は吉と出ました初みくじ |
長島敏子 |
|
肩の雪払い嫉いている素振りせず |
橋本衛門七 |
|
余白いま女が炎える愛と憎 |
伊佐次無成 |
|
御破産の出来ぬ男と泥舟に |
山本ひさゑ |
|
はなれ住む男女が見つめ合う星座 |
仲田秀子 |
|
赤い糸指に巻かれてからの欝 |
みぎわはな |
|
ふたり連れどこへ消えたか雪しきり |
御影静 |
佳 |
女には男の気宇が測れない |
黒嶋海童 |
佳 |
積みすぎた荷物を下ろす夫婦して |
田中節子 |
佳 |
コンパクト男の欠伸見てしまう |
島田握夢 |
佳 |
男の手やっぱり意識する握手 |
椙元世津 |
佳 |
いつもときめいて夫の傘にはいってく |
中西保子 |
人 |
仲の良い夫婦にもある車間距離 |
上村さな恵 |
地 |
女を守る男にはかなわない |
萩原皐月 |
天 |
平行線のままでいいのよまっかっかの夕日 |
中西保子 |
軸 |
ライターの火を囲うてくれたのは女 |
泉比呂史 |
【出席者】 (順不同・敬称略) |
井元 照夫 |
田中 要保 |
山田 蔦路 |
仲田 秀子 |
上村さな恵 |
山中 忠 |
泉 比呂史 |
竹信与志夫 |
田中 節子 |
沼尾美智子 |
長野 峰明 |
長島 敏子 |
倭 玄海 |
大橋 克己 |
中西 保子 |
尾畑 晴代 |
椙元 世津 |
青木 公輔 |
水田 象介 |
藤川 芳醇 |
吉川 千穂 |
花田 俊枝 |
島田 握夢 |
斎藤 功 |
荒垣 秋野 |
黒嶋 海童 |
小西 慶子 |
中本 三桂 |
伊佐次無成 |
瀬川 凪子 |
村上 静子 |
橋本衛門七 |
みぎわはな |
前川千津子 |
樋口 祐子 |
赤井 花城 |
【投 句】 |
村上 氷筆 |
山本ひさゑ |
上月智恵子 |
小山 紀乃 |
御影 静 |
※作品の著作権は、全てきやびん川柳会に帰属しています。無断転載、無断使用はご遠慮ください。