平成12年9月17日
神戸市勤労会館


今回のお題目(クリックするとそのテーマの川柳が表示されます)

(ラはラッキー賞)
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特別席題  「秋日雑感」  上村さな恵 選
小さくなった姑とみあげる鱗雲 瀬川凪子
初めての紅葉を食す寒霞渓 倭玄海
秋無聊御辞儀歩きの鳩見詰む 橋本衛門七
祭笛椎茸もどす庫裏夕日 橋本衛門七
途中下車決めた男の菊日和 山田蔦路
嫁った娘の部屋へ涼しい風を入れ 黒嶋海童
雨音激し夜長の迷路選る句帖 竹信与志夫
季は移り青いトマトが熟れ残る 近藤敦子
爽やかに棚田の風が頬なでる 中西保子
秋草の高さへしゃがみ考える 田中節子
きっとお前を幸せにする茜雲 島田握夢
深山に我慢できないナナカマド 坂下安伸
人恋しメークアップは秋色に 沼尾美智子
戻せない刻をめくりに来る夜風 長島敏子
誘われてまだうすもので出る残暑 田中要保
秋の絵にとんびを一羽放そうか 長野峰明
秋日燦々不逞を働く猫がいる 香川水聲
いつまでの残暑虫の音がだるい 沼尾美智子
オリンピック終わり本当の秋となり 大橋克己
食欲の秋ヘルスメーター煙たくて 長野峰明
損得を忘れ男は山車を舁く 黒嶋海童
断片の風打楽器に秋震るう 橋本衛門七
存分に犬走らせる秋の海 島田握夢
月の影ですかわたしを揺らすのは 長島敏子
秋の灯へ妻も眼鏡をかけて読む 古谷日出夫
食欲の秋を憂いて母も娘も 井元照夫
ロボットのペットと秋を聴いている 長島敏子
青森の林檎を思う秋遅々と 前川千津子
親不幸墓に詫びての彼岸花 坂下安伸
萩咲いて秋の気配を匂わせる 井元照夫
冷や酒が熱燗となる秋の卓 福島直球
新鮮な秋刀魚と今日は気が合った 瀬川凪子
暮れやすい秋を本屋から帰り 前川千津子
秋燈火少し古文の本と更け 仲田秀子
失言やひまわり枯れて秋の刑 萩原皐月
秋冷にあと振り向かす髪の艶 上村さな恵

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兼題  「今」  仲田秀子 選
炎天下バスは出たあとたった今 沼尾美智子
大切なのは今と心で繰り返す 椙元世津
今なら半額と毎日言うている 島田握夢
今か今かとお帰り待っているシチュー 近藤敦子
ドーランを落とした今の君が好き 大橋克己
出来るなら私の今を冷凍に 長島敏子
鈴虫も今を必死に鳴く窓だ 前川千津子
今一番大事は妻を愛すこと 黒嶋海童
雑草も私も今を懸命に 上村さな恵
今だから笑って言える闘病記 井元照夫
吉兆のしるし今虹が出ている 藤川芳醇
プロポーズ今を逃がせばあとがなし 福島直球
今すぐという語にこわい落とし穴 古谷日出夫
今も好き歳上なんか気にしない 大橋克己
今からでは遅い大望まだ捨てぬ 橋本衛門七
たつた今抱いてとこわいことを言う 村上氷筆
金メダル今もらい泣きしてしまう 椙元
今を大切に大根炊いている 萩原皐月
口ごもる亡母の苦しさ今わかり 田中要保
隠し子を今だに言えぬ妻と娘に 倭玄海
嫁たちへ招待FAXだしたとこ 田中節子
いまここに生きてる証しめしを食う 吉野瑛二
妙針に責められている今がある 小山紀乃
今だから話せる白い歯がこぼれ 上月智恵子
てのひらに人に渡せぬ今がある 御影静
今風の言葉わからず経を読む 樋口祐子
ときめきの今を綴っている日記 村上氷筆
少女期も今も西陽のあたる部屋 花田俊枝
二度とない今と言う刻箸を割る 吉野瑛二
今だから妻に時効の愛語る 中本三桂
丁寧にあつかう二度とない今を 御影静
逡巡をする間に今が過去になる 黒嶋海童
急に今逢いたい亡妻へ虫が啼く 橋本衛門七
明日はあす今炎えている絵を描こう 御影静
扇たたむ今吐いた嘘その中に 橋本衛門七
送り火に今兵役のない安堵 仲田秀子

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兼題  「路地」  大橋克己 選
路地裏も影なき夏の昼下がり 萩原皐月
この頃は国旗の見えぬ路地となる 坂下安伸
路地裏の屋根で火花を散らす猫 倭玄海
ひまわりが路地の見張りをしてござる 長野峰明
お目当てはやっぱり路地のつき当たり 山田蔦路
秋刀魚焼く煙り路地から海が見え 香川水聲
逆境に強い女蝶の路地育ち 黒嶋海童
路地に向ければ塀の鳥居がノーと言う 長野峰明
年一度路地が華やぐ地蔵盆 福島直球
お惣菜路地を通っておすそわけ 椙元世津
路地裏はしゃべりを乗せて水を打つ 坂下安伸
不揃いのきゅうりは妻の路地野菜 御影静
遠まわりしてまで通る路地がある 田中要保
夕日降る八軒路地のよみがえり 小西慶子
郵便屋さん路地の奥まで来てくれる 香川水聲
此の路地を抜けると街の音と風 黒嶋海童
路地裏で文化を守る地蔵盆 井元照夫
路地物は家庭用です無農薬 神田巳珠
満月や路地からワルツ響いてる 樋口祐子
風の噂路地を素通りしてしまう 樋口祐子
大望は捨て路地の灯にサンマ焼く 橋本衛門七
路地ひとつ抜けて変身する女 吉野瑛二
何だ何だ路地のトマトが笑ってる 樋口祐子
隣りから温いお皿が届く路地 古谷日出夫
路地の奥風鈴置いたまま消える 田中要保
煮っころがし分けあうなかの路地に住む 御影静
路地縫って潮の香刻む漁師宿 近藤嘉宏
牙のない鬼と仲よく路地ぐらし 上村さな恵
着飾って出る路地少し気をつかい 吉野瑛二
路地裏の岡目八目指し将棋 倭玄海
霧流れる路地で別れた女下駄 花田俊枝
器量など問わぬ路地物買ってくる 沼尾美智子
路地を出た傘が他人の顔をする 長島敏子
豆腐屋はもう路地に来ぬ夕茜 坂下安伸
お帰りの声が迎える路地どおり 中西保子
路地奥にも嫁さんが来てゴミが増え 大橋克己

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兼題  「儚い」  倭玄海 選
短命を知って儚い詩をつづり 中本三桂
裏町に世をはかなんで住むピエロ 御影静
月光に消え入りそうな恋ひとつ 小山紀乃
外れるまでの幸せを買う宝くじ 沼尾美智子
儚さを抜ける明日の灯を探す 古谷日出夫
人を陥した過去が痴呆の瞳にくすむ 橋本衛門七
片想いばかりで終わる単語帳 前川千津子
狂うほど炎えて散らした蝉の恋 御影静
儚さは空蝉に似る亡子の晴着 福島直球
儚さをいくつも蔵う胸の底 赤井花城
星流れ恋は終りと云う便り 山田蔦路
儚い夢は誰も乗らない縄電車 上村さな恵
ポックリと儚なく消えるのも美学 井元照夫
お金にはならぬ儚い虹を追う 沼尾美智子
儚いといつも生け簀で思うなり 椙元世津
ひとつずつ親ののぞみを子は砕き 黒嶋海童
儚いものを計っています砂時計 長野峰明
儚さは言うまい許されるまで生きる 赤井花城
水までも買う世の中は儚な過ぎ 大橋克己
彼が出来たんで友情ほっとかれ 島田握夢
うす墨の知らせ儚い風が吹き 黒嶋海童
そして夢は祈りになってから消える 花田俊枝
叱られた日が蘇る恩師の訃 橋本衛門七
青春を儚く散った赤トンボ 古谷日出夫
ことばも曲もはずれ儚い戦さ唄 上村さな恵
会って来た人の訃報が家で待ち 長野峰明
儚くはしない栞の山野草 田中節子
儚い影追うなと母の障子張り 沼尾美智子
儚さを雲に聞いてる奴凧 竹信与志夫
うたかたの一夜を舞うや恋蛍 長島敏子
駆け足で生きた命と君悼む 福島直球
儚さを知らぬ驕りのまま柩 竹信与志夫
儚さの過去はおわない竹とんぼ 吉川千穂
儚い夢がいっばい詰まっている枕 萩原皐月
日めくりに諸行無常の音がする 萩原皐月
残り火を燃やす余生の妻も逝き 倭玄海

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兼題  「人気」  香川水聲 選
再びの人気美しく老いて 椙元世津
バタやんのオッスと挙げた手を握る 坂下安伸
マドンナと人気した娘も姥ざくら 倭玄海
太刀打ちはできぬ人気が友にある 上村さな恵
絶頂期人気の足を狙われる 中西保子
寅さんの人気ロケ地で衰えず 井元照夫
人気沸騰たれかがどこかで扇いでる 中本三桂
二次会になるといつでも人気者 小山紀乃
その人気本物ですか棒グラフ 長島敏子
仏頂面の父が外では人気者 村上氷筆
二児の母人気を捨てた悔はない 仲田秀子
喝采の向こうにあった落とし穴 竹信与志夫
人気挽回名もなき花も実を結ぶ 上村さな恵
陰気な男何でか鳩によくもてる 島田握夢
人気にも女上位のランク付け 山田蔦路
人気者満一才に目が走る 吉川千穂
消える日の人気ぐらいに驚かぬ 花田俊枝
不人気な男になにかある長所 井元照夫
知られざる過去を持ってる人気者 中西保子
人気者だったと添える通夜の客 長島敏子
落ちかけた人気がズボンの皺にある 橋本衛門七
人気者サッカー少年風になる 吉川千穂
泣き笑い浪花の阿呆にわく舞台 倭玄海
実力と人気は別さ黙っとく 山田蔦路
サユリストこちらが歳を取り過ぎて 大橋克己
気障な指輪で落ちた人気を過信する 橋本衛門七
うっかりと仮面はずせぬ人気者 御影静
人気歌手奈落で脱いで生きのびる 井元照夫
人気絶頂その潮どきを考える 吉野瑛二
人気落ちて縋りたいほど亡母憶う 橋本衛門七
すぐ翳る人気に酔うていませんか 赤井花城
てっぺんは赤いリボンのやわらちゃん 樋口祐子
人気あるうちにがっぷり貯めておく 萩原皐月
苦節十年やっと人気の花が咲く 古谷日出夫
人気者ぽつんとひとり影ひとり 樋口祐子
旅役者に死ぬほど肩入れした女 香川水聲

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【出席者】 (順不同・敬称略)
藤川 芳醇 香川 水聲 井元 照夫 山田 蔦路 大橋 克己 上村さな恵
古谷日出夫 黒嶋 海童 竹信与志夫 仲田 秀子 神田 巳珠 福島 直球
椙元 世津 田中 要保 萩原 皐月 花田 俊枝 村上 氷筆 長島 敏子
田中 節子 倭  玄海 沼尾美智子 近藤 嘉宏 近藤 敦子 吉川 千穂
長野 峰明 中西 保子 前川千津子 島田 握夢 坂下 安伸 瀬川 凪子
小西 慶子 橋本衛門七 樋口 祐子 赤井 花城

【投 句】
中本 三桂 御影  静 青木 公輔 吉野 瑛二 上月智恵子 小山 紀乃

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