平成12年7月30日
神戸市勤労会館


今回のお題目(クリックするとそのテーマの川柳が表示されます)

(ラはラッキー賞)
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特別席題  「夏の風物」  御影静 選
桃尻がシッカロールを撒きちらし 水田象介
マンボ踊る浴衣の裾が気にかかり 福島直球
アスファルト下駄がカタカタりんご飴 瀬川凪子
カチ割りの少年の汗甲子園 井元照夫
ミンミーンと夏の扇子が全開に 瀬川凪子
送り火の亡父亡母にある万華鏡 山本ひさゑ
お誘いを断り家の冷やソーメン 田中要保
海の風ご馳走にして鱧料理 大橋克己
ビール缶プシュツ涼しい音で聞く 沼尾美智子
仏壇の白桃一個減っている 島田握夢
金魚屋が今年はソフトクリーム屋 福島直球
マンションの三十階で蚊に食われ 福島直球
風鈴に夏の盛りを泳がせる 瀬川凪子
遠花火消えて寂しさ倍になる 田中要保
老いの目のやりばに困る浜に立ち 黒嶋海童
ストレスを飛ばす花火がドンと鳴る 小山紀乃
輪を脱けて消えた浴衣の影ふたつ 長野峰明
向日葵の高さ少年山を指す 香川水聲
綿菓子を父にねだった肩車 倭玄海
田中道グラマンに似た鬼やんま 大橋克己
キャミソール一枚冷房に負ける 小山紀乃
夏雲が疾る乱れる恋ひとつ 萩原皐月
喪の知らせ届くスイカを真っ二つ 長島敏子
温度計をますます煽る蝉の声 沼尾美智子
夾竹桃の赤は悲しい色八月 みぎわはな
茗荷の花咲いて父母が恋いし 近藤敦子
かき氷花は光を飲んでいる 田中節子
ひまわりが一本天を支えている構図 伊佐次無成
八月の熱い祈りよ空の蒼 花田俊枝
丸い影踏んで日傘が坂を下り 椙元世津
誘惑に脳天ついたかき氷 坂下安伸
冗談をあおぎ返している団扇 中西保子
雑草もわたしも渇く昼下がり 古谷日出夫
十字架と思う今年の炎天下 上村さな恵
雑巾もすかっと乾く蝉しぐれ 吉川千穂
アスファルトはや蝉ころぶ炎天下 御影静

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兼題  「森」  古谷日出夫 選
森ひとつ消えて故郷が遠くなる 黒嶋海童
家の森セミのシャワーが落ちて来る 樋口祐子
にんげんに森が悲しい歌うたう みぎわはな
沈黙の森を出てくるナルシスト 伊佐次無成
森抜けて来たと言ったら疑われ 田中要保
世紀末トトロの森が消えていく 近藤敦子
バーチャルの森が火を噴く十七歳 瀬川凪子
遠い日のままで温か故郷の森 井元照夫
俺の森には帰って来ない青い馬 花田俊枝
森抜ける命じんじん重くなる 沼尾美智子
森抜けた少年あすの雲に乗る 御影静
森の出口で溜息ばかりついている 長島敏子
夕暮れの森が俄かにさわがしく 木村林吾
天敵があるので森を出られない 尾畑晴代
うたかたの愛眠らせる森の精 山中忠
少年の頃にはたのしい森だった 小西慶子
何が森であったのか結婚すると言う 島田握夢
森を出て小人それから戻らない 吉野瑛二
森へ来て森の空気を見失う 青木公輔
高速高架村の鎮守の森が無い 大橋克己
森のみどりに抱かれて描いた夢がある 長野峰明
八月を解けば殉死椿の森 田中節子
謀反猿生まれた森に帰れない 井元照夫
割り箸の不足他国の森を伐り 倭玄海
森の奥静かに明日の絵が見える 中本三桂
森の奥へ落したままの泣きっ面 小西慶子
メルヘンの森見付からぬ旅の果て 赤井花城
分け入った女の森に泣かされる 黒嶋海童
地図にない森で民話の風に逢う 山中忠
森を抜けると私の罪科は拭えるか 香川水聲
ノルウェーの森を駆け抜けペガサスに 村上氷筆
おしゃれな森で純白の雲覗かせる 田中節子
合歓の花咲くころ森を恋しがる 萩原光華
迷いこむ森で詩人は詩を拾う 山中忠
愛と憎その接点に森がある 吉川千穂
森の木も枯れてふる里遠くなる 古谷日出夫

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兼題  「低い」  長野峰明 選
背の低い男だ見合をしてやろう 青木公輔
支持率の低い与党の数合わせ 倭玄海
頭垂れ父の叱言をやり過ごす みぎわはな
辞を低うして自慢のむすめ嫁にやり 木村林吾
目標値低めにしとく保身術 福島直球
思惑があってその腰低うする 吉野瑛二
カチューシャの唄流れ来て低く和す 赤井花城
善行は低い路傍で花咲かせ 黒嶋海童
妻の反乱低血圧を武器とする 上月智恵子
看る相談寡黙な母の低い膝 田中要保
風鳴かず低い音符のせみしぐれ 近藤嘉宏
目線下げると別の世界も見えてくる 小山紀乃
腰かがめ握手をねだる襷がけ 木村林吾
物腰の低さで風をやり過ごす 樋口祐子
流れ弾いつでも避ける低い腰 山中忠
笑い合う家族で低い屋根に住む 上村さな恵
山靴の重さと降りてゆく下界 赤井花城
短か夜の羊を寄せぬ低い聲 坂下安伸
いざと言う時には立とう低い椅子 小山紀乃
仲良しになれる隣も低い垣 小山紀乃
低音の魅力に蛇口ひねってる 中西保子
低血圧言い分けにして朝寝坊 近藤敦子
セールスの腰の低さに身構える 井元照夫
栄光の過去は見せない低い腰 上村さな恵
熱帯夜寝茣蓙へ晒す痩せた臑 大橋克己
低い次元で赤いスポーツカーが疾る 萩原皐月
何を見んとて腰を屈めるのか君よ 長島敏子
補聴器のボリユーム上げて聞き直す 吉野瑛二
出る杭の痛みを知っている低さ 山本ひさゑ
負け犬は低い次元で吠えている 上村さな恵
かと言って死ぬ迄厚底ではおれず 島田握夢
低くすぎる提示につなぐ首ひとつ 倭玄海
視線を低くして花の精に会う 田中節子
夢は低めに見合の席に座ってる 中西保子
妻を呼び何やら低い医師の声 黒嶋海童
低く唸って吠えない犬が待つ不気味 長野峰明

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兼題  「背」  小山紀乃 選
牛乳屋詫びる背中が泣いている 大橋克己
たわむれに妻の背中を流す旅 坂下安伸
ファスナーを下げてと背なを向けてくる 水田象介
蝉とり網が背のびしている白いシャツ 坂本須磨代
寝返りを打つ背に悔いがまだ残る 上村さな恵
ショーウインドウすこうし老いた背をうつす 上月智恵子
古傷の背中を見せて過去語る 中本三桂
敗北の背骨が軋む音がする 吉川千穂
風いつも私の背なを押してくれ 吉野瑛二
背伸びした街で息切れしてしまう 山本ひさゑ
夫の背越えた息子の太い声 みぎわはな
スランプに背骨のきしむ音がする 御影静
あの齢で家裁を背なに右ひだり 坂下安伸
信じてるあなたの背なにある噂 山中忠
背のびして時代の波に乗ってみる 吉川千穂
四面楚歌ふっと背中を追うている 萩原光華
象の背に夕日が溜る父の童話 花田俊枝
背もたれの椅子で余命を考える 尾畑晴代
踏ん張ろう背なに故郷の山がある 山本ひさゑ
いつも会うお地蔵さまは背を見せぬ 沼尾美智子
行きつけばわが故里は母の背な みぎわはな
背を押され始めて気付く無為無策 御影静
逢えば訣れの風さえも重たき背 赤井花城
一コマの夏を背中に折りたたむ 古谷日出夫
じわじわと背なが曲がってくる本音 御影静
振り返り背なに貼り付く目を払う 田中要保
その嘘をやさしく聞いている背中 田中節子
背は曲げぬこの一幕が終わるまで 長島敏子
背を向けた郷里から母の荷が届く 花田俊枝
ふたりとも無言で痩せた背を流す 島田握夢
迷うたびプラス指向が背を押す 近藤敦子
みつめればとことん飢えている背中 伊佐次無成
背を向けるたびに夕日が落ちてゆく 長島敏子
背負い投げくった気分で誕生日 近藤嘉宏
背伸びして疲れませんか風の中 萩原皐月
結局は他人の背だな都会の絵 小山紀乃

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兼題  「澄み」  山田蔦路 選
十字切る手に賛美歌の澄んだ声 御影静
川底が澄んで小魚落ちつけぬ 長島敏子
捨てたいが人形の瞳は澄んでいる 坂下安伸
かきまわすなやっと澄んでる水の面 みぎわはな
ひたかくす邪心に月が澄んでくる 中西保子
七夕へ子供の瞳澄んでいる 萩原皐月
川底の小石に少女期が揺れる 近藤敦子
澄んだ音の世界に集う音楽家 中本三桂
どこまでも澄んだ音です母の鈴 みぎわはな
思いきり泣いてこころが澄んでくる 近藤敦子
空澄んでこぼれる程の故郷の星 近藤敦子
澄んだ瞳で乳呑み児母に安堵する 香川水聲
澄み切った空気へ延ばす万歩計 古谷日出夫
疑いの水が澄むまで米を研ぐ 古谷日出夫
水澄んでメダカの学校たのしそう 村上静子
写経するひととき心澄んでいる 村上静子
美談聞き私のこころ澄む夏日 吉川千穂
ありがとうの指研ぎ水が澄んでくる 沼尾美智子
澄んでいる子の目に叱る気も失せて 倭玄海
山の向うの鐘が聞こえる雨上がり 島田握夢
引き込まれそう湖の透明度 赤井花城
石投げた昨日の池が澄んでいる 萩原皐月
阿寒湖のマリモ神秘で澄み渡る 井元照夫
澄んだ湖クッシーが頭出し 水田象介
ミサ終えた身体軽るなった気分 島田握夢
焼酎に頭も澄んで暑気払い 坂下安伸
何も無い故郷の川は澄んでいる 坂下安伸
少年の澄む目で手話が光りだす 山中忠
子らの瞳の空の青さは汚すまい 赤井花城
澄んだ水面に富士の冠雪揺れ動く 水田象介
岩清水ゴクゴク男の喉仏 香川水聲
澄んだ空見上げラムネで小休止 仲田秀子
澄む川をひたすら待っているめだか 御影静
澄んだ目の奥にも秘めている野心 中本三桂
君の瞳に乾杯と声掛けられて 小西慶子
両の掌にこんなに澄んだ水掬う 吉野瑛二
鶴千羽折って八月の空が澄む 萩原皐月
清純がぴったり心澄んでいる 山田蔦路

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【出席者】 (順不同・敬称略)
井元 照夫 田中 要保 近藤 敦子 近藤 嘉宏 沼尾美智子 花田 俊枝
古谷日出夫 村上 静子 山中 忠  坂本須磨代 田中 節子 長野 峰明
黒嶋 海童 大橋 克己 尾畑 晴代  倭 玄海 上村さな恵 吉川 千穂
中西 保子 仲田 秀子 香川 水聲 長島 敏子 水田 象介 小西 慶子
椙元 世津 神田 巳珠 萩原 光華 瀬川 凪子 萩原 皐月 樋口 祐子
御影 静  島田 握夢 坂下 安伸 木村 林吾 小山 紀乃 山田 蔦路
福島 直球 山本ひさゑ みぎわはな 伊佐次無成 赤井 花城

【投 句】
吉野 瑛二 青木 公輔 中本 三桂 上月智恵子 村上 氷筆

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