平成12年1月16日
神戸市勤労会館
今回のお題目(クリックするとそのテーマの川柳が表示されます)
(ラはラッキー賞)
特別席題 「前夜」 黒嶋海童 選
ラ |
前夜した約束消える地震(ない)の朝 |
秀子 |
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その前夜笑いころげていた家族 |
要保 |
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災いの前夜に椿咲き誇る |
凪子 |
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露ほどの予感も震災(ない)の日の前夜 |
皐月 |
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花嫁の覚悟前夜にたしかめる |
保子 |
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たあいない話に嫁ぐ日の前夜 |
皐月 |
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仲人の祝辞リハーサルするその前夜 |
晴代 |
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親だからねむっておれぬその前夜 |
蔦路 |
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安定剤前夜に頼り娘の挙式 |
照夫 |
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華燭の日明日にゆっくり湯に浸る |
比呂史 |
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前夜まで孫と笑って父は逝き |
衛門七 |
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前夜まで元気早朝のデンワ鳴る |
保子 |
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前夜から気にした母の訃のしらせ |
玄海 |
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涙は乾くもの前夜の屈辱忘れかけ |
衛門七 |
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遅刻の夢ばかり前夜眠られず |
光華 |
ラ |
おふくろの歯応え食べる一夜漬 |
慶子 |
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血圧の動悸が耳につく前夜 |
光華 |
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海を背に軽くキスした前夜祭 |
俊枝 |
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やるだけは充分悔いのない前夜 |
千津子 |
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前夜からの雪が止んでる子らを呼び |
静子 |
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前夜から腰痛と言うメッセージ |
千津子 |
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二千年の前夜を売ってほくそ笑み |
峰明 |
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手術前夜強気弱気が相まじえ |
照夫 |
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飲み過ぎた前夜のことを聞かれても |
比呂史 |
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センター試験前夜よく寝た息(こ)に安堵 |
秀子 |
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あした出発(た)つ留学の子の荷を撫でる |
要保 |
佳 |
あすの日のさだめは知らぬ夜のお茶 |
比呂史 |
佳 |
象は象の悩みで前夜まで騒ぐ |
さな恵 |
佳 |
ふとん干し前夜の鬱を陽に晒す |
敦子 |
佳 |
気がかりな夢かあさんに電話する |
敦子 |
佳 |
勝負する前夜の月は澄んでいる |
凪子 |
人 |
決断が前夜の雪を踏んで出る |
静子 |
地 |
前夜まで真っ白だった懺悔録 |
さな恵 |
天 |
開店を明日に花輪の位置も決め |
日出夫 |
軸 |
しつけ糸抜いて晴れ着が待つあした |
海童 |
兼題 「節目」 萩原皐月 選
ラ |
六十を節目と思う身だしなみ |
千津子 |
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それぞれの節目に詰めてある望み |
花城 |
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竹槍の節の太さが掌に残る |
静港子 |
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節目には絆をぎゅっと締め直す |
凪子 |
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節目来るたびに大事な歯が抜ける |
節子 |
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陶芸家の指の節目にある年期 |
照夫 |
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きっちり節目を締めくくったの |
はま子 |
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公 |
輔 |
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節目ごとぎっくり腰が顔を出す |
保子 |
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ぜんざいを一杯食べる節目だね |
千津子 |
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いくつ目の節目でうつつから醒める |
花城 |
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元旦にひらく日記の一ページ |
紀乃 |
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のどかにもふっと芽を出す節目かな |
光華 |
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遷る季の節目を知って椿落つ |
衛門七 |
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節目から抜けて自由の風に生き |
日出夫 |
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円周に休む節目が見当たらぬ |
秀子 |
ラ |
こだわりが過ぎて節目にある頑固 |
さな恵 |
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子育てにも節目があって本ひらく |
静子 |
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若竹の節目に萌える未来像 |
日出夫 |
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告白の勇気節目となった今 |
静 |
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成人の節目に着こむ三ッ揃い |
玄海 |
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冬陽の中で節目を悟る数珠の音 |
さな恵 |
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節目とや三食しっかり喰べようよ |
千津子 |
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これも節目か左遷の汽車がよく揺れる |
海童 |
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姑と住み暮らしの節目など覚え |
静子 |
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冬の正座和尚の法話節目とす |
節子 |
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左遷辞令も勤めの節目乱すまい |
衛門七 |
佳 |
立ち直る節目に夫がいてくれた |
静 |
佳 |
決断は男の節目家業継ぐ |
蔦路 |
佳 |
ミレニアムの乾杯皆の顔揃う |
紀乃 |
佳 |
あれも節目か溝に落とした貝ボタン |
節子 |
佳 |
節目のりこえ私の空が広くなる |
敦子 |
人 |
YESNOこれが節目になる予感 |
凪子 |
地 |
うぐいすの音痴節目が決まらない |
照夫 |
天 |
節目にはネクタイにするループタイ |
比呂史 |
軸 |
最後の節目にいつ本の樹が根付く |
皐月 |
兼題 「こころ」 村上静子 選
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私生活こっそり覗く好奇心 |
三桂 |
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死刑囚の掌に純心がよみがえる |
保子 |
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ふた心を胸にさ迷う風の街 |
日出夫 |
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心から笑い合う日が待ち遠し |
花城 |
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心からうれしい両手上げて逢う |
比呂史 |
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真心を繋げば愛の輪が開く |
日出夫 |
|
良心をかかげる旗はおろせない |
静 |
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二次元の心が揺れる老の恋 |
衛門七 |
ラ |
僅かでも老いの真心赤い羽根 |
照夫 |
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童心にかえって里の小鮒釣り |
照夫 |
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真実は問うまい心冷えて来る |
海童 |
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ペン先の渦にこころを載せていく |
紀乃 |
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心づけは幹事にまかす宿浴衣 |
比呂史 |
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本心はベールに包んだ話しぶり |
敦子 |
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「老化です」本心で言う若き医師 |
慶子 |
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角ばったこころを丸くする天使 |
千穂 |
ラ |
野心のない旧友と呑む温い酒 |
照夫 |
|
心から祈る両掌はすぐに合う |
比呂史 |
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春風が心の扉そっとあけ |
千穂 |
|
言葉のとげを心寒さのせいにする |
さな恵 |
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もう二度と会わぬときめた自尊心 |
静港子 |
|
澄み渡る青へこころをあずけ度い |
光華 |
|
親友の心がせまい泣いている |
蔦路 |
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宅送に心を包むローカル紙 |
晴代 |
|
喪心のいつしかうすれゆく月日 |
秀子 |
|
仏心がうすれて見えた蓮の花 |
玄海 |
佳 |
打ち明ける姉の心は吸取紙 |
皐月 |
佳 |
内心はまだ許せぬが仏の顔 |
祐子 |
佳 |
柔軟な心にチャンスが来てとまる |
皐月 |
佳 |
感動が心ゆさぶる名画展 |
保子 |
佳 |
心の中の鬼と戦い姑を看る |
紅法師 |
人 |
喪心を風に預けて旅鞄 |
衛門七 |
地 |
介護する心ときには鬼も棲む |
玄海 |
天 |
支えあってこころのケアする笑顔 |
千津子 |
軸 |
心にくい程気くばりの出来たひと |
静子 |
兼題 「円満」 藤本静港子 選
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円満のおすそ分け仮設からもらう |
公輔 |
|
子がくさび打って戻した夫婦仲 |
玄海 |
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仏像の皆円満にある疑問 |
峰明 |
|
象の目はいつも笑っているようだ |
皐月 |
|
えべっさん円満な顔売って冬 |
如水 |
|
円満でかしわ手神と近くなる |
実 |
ラ |
震災をバネに家族の円満度 |
さな恵 |
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ゆったりと会話うけとめ冬日向 |
慶子 |
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自律神経今日此頃は円満で |
晴代 |
|
円満でなくて十人産めますか |
峰明 |
|
円満な暮らしの中にいてひとり |
静 |
|
夫婦とは手頃な嘘で春うらら |
俊枝 |
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円満といわれ弁解せずにおく |
比呂史 |
|
バラ千本声が弾んで庭に雪 |
祐子 |
|
円満な顔した龍はまだ見ない |
衛門七 |
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円満な顔を鏡に教えとく |
比呂史 |
ラ |
円満な仲錯覚も温かい |
嘉宏 |
|
演目は夫婦円満茶番劇 |
嘉宏 |
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もつれ糸解れたらしい笑い声 |
敦子 |
|
円満に酔うて居ります我が家族 |
晴代 |
|
積み荷おろし夫婦ふたりを謳歌する |
祐子 |
|
円満な顔で貧乏ゆすりする |
紅法師 |
|
円満にお前百まで踊ろうか |
紅法師 |
|
円満に解決ウラがあるらしい |
瑛二 |
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輪の中の丸さに馴れて出られない |
紀乃 |
|
円満をのぞかれているすきま風 |
保子 |
|
美しく老いたくまろやかに生きる |
紀乃 |
佳 |
転びころんでまあるくなった膝がしら |
皐月 |
佳 |
シルバープラン何時円満を絵に描ける |
花城 |
佳 |
円満な母がいて父がいて家族 |
静 |
佳 |
雪を見るみな円満な人ばかり |
千津子 |
佳 |
親豚子豚みな円満な顔で寝る |
衛門七 |
人 |
よく笑う家族で天井が高い |
俊枝 |
地 |
円満な家族が拾う風の私語 |
千穂 |
天 |
円満の主役は白いかっぽう着 |
節子 |
軸 |
一日で欠ける円満なる月よ |
静港子 |
兼題 「手紙」 泉比呂史 選
ラ |
横文字が時どき入ってる手紙 |
静子 |
|
恋文は今もあります妻の手に |
玄海 |
|
ふるさとの便りに潮が満ちてくる |
静 |
|
引き取るか取らぬか薄い封書来る |
要保 |
|
封切るといつもそよ風吹く便り |
花城 |
|
昔を連れて候文の年賀来る |
峰明 |
|
ただ許す父の手紙を読んでいる |
保子 |
|
何くれと母を案じるエアメール |
静 |
|
文箱の中の亡夫の手紙が生きている |
晴代 |
|
風薫る幸せ彩で来た手紙 |
千穂 |
|
野火走る手紙の中の愛と憎 |
さな恵 |
|
ピラカンサ冬の女神のラブレター |
敦子 |
|
娘から風雨に濡れてきた手紙 |
節子 |
|
拝啓へ続く文句が纒まらぬ |
日出夫 |
|
アイラブユーの手紙を風がぬすみ読む |
日出夫 |
ラ |
歳月のてのひらに来た清い文 |
光華 |
|
迎春に薄墨色の手紙来る |
俊枝 |
|
追伸の一行雪が降りしきる |
紀乃 |
|
恋しい恋しい便りを抱いて寝る |
祐子 |
|
追伸にさらりと本音書いてある |
海童 |
|
お別れの手紙に苦い味がする |
実 |
|
封をまだしない手紙よさくら草 |
俊枝 |
|
梅半ば詫びの手紙がまだ書けぬ |
衛門七 |
|
結婚しますと彼女の手紙炎ゆる |
如水 |
|
手紙また母上様と書く無心 |
千津子 |
|
花柄の切手嬉しい便り読む |
紅法師 |
佳 |
ふるさとの言葉で母の手紙くる |
三桂 |
佳 |
そして春手紙は今も胸に咲く |
さな恵 |
佳 |
ライバルの手紙の誤字に気を許す |
花城 |
佳 |
思慕すこし封じて雪のポストまで |
秀子 |
佳 |
行間に耳のかたちが透けて見え |
皐月 |
人 |
絵便箋三枚ほどの愛が来る |
静港子 |
地 |
巻紙で相変わらずの美しさ |
千津子 |
天 |
大切な手紙が雨にぬれてくる |
光華 |
軸 |
恩人の手紙に誤字がひとつある |
比呂史 |
【出席者】 (順不同・敬称略) |
長野 峰明 |
井元 照夫 |
吉川 千穂 |
花田 俊枝 |
近藤 嘉宏 |
近藤 敦子 |
中西 保子 |
細谷 如水 |
上村 さな恵 |
古谷 日出夫 |
田中 要保 |
倭 玄海 |
村上 静子 |
仲田 秀子 |
泉 比呂史 |
樋口 祐子 |
瀬川 凪子 |
黒嶋 海童 |
小西 慶子 |
萩原 皐月 |
尾畑 晴代 |
橋本 衛門七 |
萩原 光華 |
前川 千津子 |
毛利 きりこ |
山田 蔦路 |
豊島 実 |
赤井 花城 |
【投 句】 |
箱木 紅法師 |
小山 紀乃 |
吉野 瑛二 |
中本 三桂 |
御影 静 |
青木 公輔 |
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