平成11年11月21日
神戸市勤労会館
今回のお題目(クリックするとそのテーマの川柳が表示されます)
(ラはラッキー賞)
特別席題 「バーゲン」 坂下安伸 選
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バーゲンセール関係ないネ蝸牛 |
敦子 |
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バーゲンで売ります亭主の頑固者 |
秋野 |
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活気づく妻にバーゲン誘われる |
水聲 |
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バーゲン終わる町はすとんと冬の底 |
衛門七 |
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バーゲンを誘い合ってる市場かご |
秀子 |
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反省で埋まるバーゲンの家計簿 |
秀子 |
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バーゲンに自問自答を買いあさる |
千穂 |
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勝利する気持になってザ・バーゲン |
美智子 |
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褒められてバーゲン言えぬ鼻メガネ |
峰明 |
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押されても押し返すバーゲンのたのもしさ |
慶子 |
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バーゲンへ出せば売れない物が売れ |
日出夫 |
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チラシ手に妻が上手に買うてくる |
日出夫 |
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街はバーゲン欲のない老夫婦 |
皐月 |
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バーゲンで買ったパンツの隠れきず |
保子 |
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バーゲン用に作られた服すれちがい |
静子 |
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無駄な品又バーゲンに乗せられる |
晴代 |
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バーゲンのかごに伸びてる手・手・手 |
敏子 |
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バーゲンでドレスアップの娘の打算 |
照夫 |
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バーゲンの触った挙句買いもせず |
世津 |
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生き延びてバーゲンの品積み上げる |
千穂 |
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バーゲンの一番乗りを攫われる |
さな恵 |
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季節外ればっかりバーゲン買うて来る |
瑛二 |
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モカ飲んでバーゲンまでの気を静め |
克巳 |
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バーゲンに腕まくり見せてざあますよ |
峰明 |
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バーゲンのちらしゆつくりしておれぬ |
蔦路 |
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落ち込んだ妻バーゲンへ解き放す |
ひさゑ |
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バーゲンを覗き見してる他人の目 |
千穂 |
佳 |
バーゲンまで待てと歯磨き絞らされ |
直球 |
佳 |
来年の季節を買っておくバーゲン |
晴代 |
佳 |
バーゲンに出したい程の子沢山 |
敦子 |
佳 |
バーゲンの袋行き交う地下出口 |
敏子 |
佳 |
バーゲンの妻よあなたは生きている |
氷筆 |
人 |
バーゲンへ夫婦茶碗を売りに出す |
保子 |
地 |
バーゲンで男無沙汰に喫うている |
氷筆 |
天 |
特売場出るとすました貌になり |
氷筆 |
軸 |
バーゲンで買わぬ服でも抱え込む |
安伸 |
兼題 「悔しい」 吉川千穂 選
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正論に負けて悔しい口封じ |
三桂 |
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悔し涙がポロリエプロンから落ちる |
公輔 |
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後輩がもう前を行く追いかける |
紀乃 |
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人知れず悔しいとポツンと独り言 |
如水 |
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悔しさを留めた袋がほころびる |
さな恵 |
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落日や悔しさひとつしまう胸 |
祐子 |
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悔しさを怒鳴ってみても曇り空 |
安伸 |
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悔し涙こらえて帰るランドセル |
保子 |
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人妻の優しい風に触れた悔い |
日出夫 |
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悔しさがなかなか消えず秋深む |
千津子 |
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敬遠のボールに悔しブーイング |
玄海 |
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微笑して胸の悔しさ覗かせず |
衛門七 |
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良縁を逃してからの悔いの日々 |
照夫 |
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悔しいが妻には勝てず独り言 |
安伸 |
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悔しいけど真っ赤なりんごから売れる |
美智子 |
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枯葉よりかろしおんなの悔のかず |
俊枝 |
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コスモスに悔しい顔をみつめられ |
千津子 |
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悔しさを蹴飛ばす缶が見当たらず |
瑛二 |
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悔しさをバネに夫婦でよく稼ぎ |
静子 |
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悔しさをバネに大きく脱皮する |
氷筆 |
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悔し涙を拳で拭う男節 |
峰明 |
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悔し涙をそっと隠してくれた闇 |
敏子 |
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真に受けた愚かさを知る冬の午後 |
世津 |
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悔しさの一点に初冬の夕陽が赤く |
如水 |
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余っ程の悔しさ飯を五杯食う |
峰明 |
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悔しさと指輪のあとが残ってる |
晴代 |
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バラ一輪悔しさ少し落ち着かせ |
静子 |
佳 |
悔しさの色増して行くおんな坂 |
祐子 |
佳 |
悔し涙見て見ぬふりの影法師 |
美智子 |
佳 |
能面の裏で悔しさ揺れている |
祐子 |
佳 |
言い負けた妻が悔しい平手打ち |
玄海 |
佳 |
悔しさを抱いて黄色い月仰ぐ |
瑛二 |
人 |
悔しさが足の裏から這い上がる |
瑛二 |
地 |
悔しさはライバルという代名詞 |
千津子 |
天 |
悔し涙を見せぬ地蔵が泣いている |
水聲 |
軸 |
洗濯機回し悔しさ干しておく |
千穂 |
兼題 「やっと」 尾畑晴代 選
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やっと重荷降ろす三人嫁がせて |
公輔 |
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戻り橋やっと未練を切り落とす |
ひさゑ |
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深海の大和にやっと陽があたる |
さな恵 |
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不肖の子やっと就職ほっとする |
照夫 |
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ライバルの背中がやっと見えた坂 |
敏子 |
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生さぬ児がやっとなついて膝にくる |
氷筆 |
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赤飯でやっと少女はおんなです |
照夫 |
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喪が明けてやっと我が家に戻る風 |
日出夫 |
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商工ローン借りずにやっと生き延びる |
直球 |
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やっと叶った椅子へ礫が飛んで来る |
峰明 |
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逆風にやっと見つけた職ひとつ |
紀乃 |
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やっと課長になったところで社がつぶれ |
直球 |
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亡父の事やっと泣かずになりました |
慶子 |
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尻上がり出来た校庭暮れなずむ |
花城 |
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二人してやっと築いた小さい城 |
恵夢 |
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波羅僧羯諦やっと菩薩の手に縋る |
玄海 |
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十余年やっと婚家になれました |
敦子 |
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子ら巣立ちやっと一息つく財布 |
敏子 |
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まとまったヘソクリやっとできました |
静子 |
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下宿した子から電話がやっとあり |
皐月 |
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子ら帰りやっと二人で食う茶漬 |
静子 |
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均等法やっと二人の絵が描ける |
恵夢 |
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鬼の面外してやっと孫を抱く |
さな恵 |
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やっとついた決心もりもり飯を食う |
衛門七 |
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やっと煮えた五目大豆は話好き |
美智子 |
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鏡みてやっと諦めつけている |
静 |
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夫(つま)のくせやっと気にせぬほどに添い |
秀子 |
佳 |
柩の中で安堵の顔を取り戻す |
紀乃 |
佳 |
土壇場でやっと男の腹が読め |
日出夫 |
佳 |
姑が帰りやっとのびのび昼寝出来 |
静子 |
佳 |
頑張ったローンがやっと済む夕餉 |
日出夫 |
佳 |
やっとゆとりの父の白髪が目立つ今日 |
皐月 |
人 |
共白髪やっとわかった匙加減 |
敏子 |
地 |
髷やっと結えて力士の顔になる |
瑛二 |
天 |
出向でやっとつながる首ひとつ |
玄海 |
軸 |
やっと馴れたひとりぼっちの抱き枕 |
晴代 |
兼題 「間際」 香川水聲選
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消灯の間際にひとり寒い部屋 |
三桂 |
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炎の間際出す白旗は持っている |
与志夫 |
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出産の間際にやって来た夫 |
紀乃 |
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約束の間際にいつも来る貴方 |
紀乃 |
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別れする間際女の謎解けぬ |
恵夢 |
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あの虹が消える間際に告白を |
静 |
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旅立ちの間際に探すパスポート |
花城 |
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ぎりぎりで走り出す癖親の癖 |
凪子 |
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退社ベルの間際元気取りもどす |
さな恵 |
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出発の間際で泣いた現地妻 |
玄海 |
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ふんぎりがつかず飛び乗る発車ベル |
花城 |
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印を押すその間際まで迷う指 |
敏子 |
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終焉の母はマリアの貌になる |
日出夫 |
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結婚間際彼とまだある車間距離 |
晴代 |
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こときれる間際の貌は神のもの |
衛門七 |
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農一筋死ぬ間際まで父は野良 |
照夫 |
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出立の間際にぽつり本音漏れ |
嘉宏 |
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産卵間際果てる命により添って |
凪子 |
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絶筆に間際の生の凄さあり |
氷筆 |
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どたん場でけろっと呆れた顔を見せ |
蔦路 |
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間際まで化身の鶴は愛を織る |
さな恵 |
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かえり間際のっぴきならぬことを聞く |
保子 |
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手術台へ上ったまでは覚えてる |
瑛二 |
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死の間際会いたい女(ひと)がいると父 |
秀子 |
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間際まで祝辞ひそかにそらんずる |
皐月 |
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間際になってあれやこれやとまた迷う |
敦子 |
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発車間際母は小さく頷いて |
敏子 |
佳 |
火を渡る間際の顔が揺れている |
祐子 |
佳 |
荼毘に付す間際も老父の自負を見る |
さな恵 |
佳 |
散り際の台詞は何も残すまい |
花城 |
佳 |
また来ると帰り間際に言ったきり |
嘉宏 |
佳 |
逃げのびる間際で橋を落とされる |
ひさゑ |
人 |
花束が間に合うピアノ冬の旅 |
千津子 |
地 |
ご免なさいなかなか言えず発車ベル |
千津子 |
天 |
えんぴつも間際の答えおしえない |
安伸 |
軸 |
素振りさえ見せない女のしたたかさ |
水聲 |
兼題 「劇」 福島直球 選
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無言劇いつまでつづく冬の街 |
千津子 |
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家庭劇我家は主役ばかりです |
晴代 |
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致死量の劇薬隠し持つ小鳩 |
氷筆 |
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奈落から劇の進行聞いている |
紀乃 |
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生涯を自作自演の幕で閉じ |
日出夫 |
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宇宙のドラマ流星の雨辰が見る |
凪子 |
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寸劇を重ね世紀が昏れて行く |
花城 |
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三歩後からついてゆく夫婦劇 |
祐子 |
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年輪に悲喜劇きざむ背が丸い |
静 |
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愛憎の劇くりかえし夫といる |
秀子 |
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涙腺の弱さを見せる劇評家 |
さな恵 |
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観劇の後色褪せてみえる街 |
敦子 |
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出会った頃のドラマに戻すオルゴール |
美智子 |
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赤紙の悲劇も風化世紀末 |
秀子 |
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劇に出る馬は自負あり悟りあり |
静子 |
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寸劇は終わった背伸びしてやろう |
公輔 |
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劇的なドラマ女神が見届ける |
三桂 |
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老いの風邪劇しい咳を案じ合い |
克巳 |
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最後までつきあってみる茶番劇 |
敦子 |
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諍(いさかい)の夜の劇薬が掌に静か |
衛門七 |
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わが劇の幕近くなり余燼燃ゆ |
嘉宏 |
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人生は幕の降りない夢芝居 |
日出夫 |
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会議室いつまで続く無言劇 |
世津 |
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女剣劇のビラまた剥がす村時雨 |
衛門七 |
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僕のドラマに女性の匂いしてこない |
保子 |
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劇場がハネて屋台の裾が冷え |
水聲 |
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結末は悲しいまんま劇終わる |
蔦路 |
佳 |
観劇の余韻でひと駅を歩く |
秀子 |
佳 |
一幕一場己の生を炎と燃やす |
氷筆 |
佳 |
冷戦がまだ続いてる無言劇 |
恵夢 |
佳 |
劇場を後に華やぐ老姉妹 |
世津 |
佳 |
距離おいて嫁が主役の平和劇 |
安伸 |
人 |
文楽のさわり此処ぞと三味も泣く |
安伸 |
地 |
喜劇かも私ひとりが空回り |
敏子 |
天 |
茶番劇わかればなしが裏返る |
保子 |
軸 |
一筆を取る劇薬の処方箋 |
直球 |
【出席者】 (順不同・敬称略) |
井元 照夫 |
村上 氷筆 |
吉川 千穂 |
沼尾 美智子 |
花田 俊枝 |
細谷 如水 |
長野 峰明 |
古谷日出夫 |
大橋 克己 |
中西 保子 |
吉野 瑛二 |
上村 さな恵 |
長島 敏子 |
仲田 秀子 |
山田 蔦路 |
倭 玄海 |
椙元 世津 |
香川 水聲 |
山本 ひさゑ |
近藤 嘉宏 |
近藤 敦子 |
橋本 衛門七 |
豊島 実 |
坂下 安伸 |
小西 慶子 |
樋口 祐子 |
荻原 皐月 |
瀬川 凪子 |
荒垣 秋野 |
福島 直球 |
尾畑 晴代 |
村上 静子 |
前川 千津子 |
赤井 花城 |
【投 句】 |
竹信 与志夫 |
藤川 芳醇 |
中本 三桂 |
小山 紀乃 |
松井 恵夢 |
青木 公輔 |
御影 静 |
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