平成11年9月23日
神戸市勤労会館
今回のお題目(クリックするとそのテーマの川柳が表示されます)
(ラはラッキー賞)
特別席題 「家、内、喜、多、留」 小山紀乃 選
ラ |
休火山だった内気にだまされる |
握夢 |
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心臓がドキドキ居留守楽じゃない |
実 |
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喜びを隠しきれないスーツの背 |
保子 |
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何んだかんだ言えどわが家は宝船 |
嘉矩 |
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家中の戸を開け放し風と寝る |
美智子 |
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コンビニで涼んで家に寝に帰る |
ひとみ |
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橋架かりフェリー繋留されて泣く |
海童 |
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三歩歩いて拍手がわいた試歩の庭 |
氷筆 |
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喜びを長い電話でお裾分け |
峰明 |
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尻尾振る犬の頭が叩けるか |
峰明 |
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内々に左遷の話きかされる |
与志夫 |
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茶柱が今日の門出の前祝い |
氷筆 |
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留袖に老母もはしゃいでいるロビー |
保子 |
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師を越えた弟子喜びとさびしさと |
敦子 |
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喪が明けて我が家に風を入れ変える |
日出夫 |
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あっちにもこっちにも内緒にしてと云いふらす |
千代美 |
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喜びも大皿に盛る母の詩 |
日出夫 |
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内々の祝杯呼ばぬ人が来る |
直球 |
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絶妙のコンビと他人の言う家内 |
敏子 |
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内心の炎ギラギラ燃えて夏 |
如水 |
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手さぐりの幸せつかむ終の家 |
祐子 |
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多情多恨いつも噂の中にいる |
無成 |
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ベランダが家族のことをよくしゃべる |
美智子 |
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多情多感花屋の花の影を踏む |
無成 |
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ひまわりと多難の夏を乗り越える |
さな恵 |
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嫁もやっぱり家風に疑問抱いている |
千代美 |
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欠けていく敬語をピンで留めておく |
節子 |
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弥次喜多と歩いてみたい暇はある |
安伸 |
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塩壺の底に家内の不発弾 |
実 |
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家々に国旗たなびく幻想か |
氷筆 |
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家中の時間聞こえる妻の留守 |
海童 |
ラ |
我が家にも勝手な貘がいて平和 |
与志夫 |
人 |
身の内にまぶしい愛がまだあった |
俊枝 |
地 |
多数決どこに降ろそうこの拳 |
敏子 |
天 |
神もほとけも喜色満面ほっとする |
無成 |
軸 |
チャンス到来喜びの束抱え込む |
紀乃 |
兼題 「浮き世」 島田握夢 選
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助けたり助けられたりして浮き世 |
世津 |
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どこを突いても不満吹き出てくる浮き世 |
紀乃 |
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浮き世の嵐にまた逢いそうな曲り角 |
公輔 |
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仏壇へ時々愚痴を云う浮き世 |
千代美 |
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のほほんで浮き世離れの夫がいる |
海童 |
ラ |
浮き世の風に向い猫が走った |
節子 |
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杭一本打って浮き世を生きてみる |
美智子 |
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日曜のチャイム浮き世を持ってくる |
ひとみ |
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極楽に近い浮き世を知っている |
紀乃 |
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浮き世への義理を果たしたのし袋 |
静 |
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不器用に浮き世の葦として揺れる |
凪子 |
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絡みつく浮き世忘れてあっち向く |
紀乃 |
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浮き世しみじみ隠し女の柩送る |
衛門七 |
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起承転のころんでばかりいる浮き世 |
ひさゑ |
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中流の意識で背伸びする浮き世 |
照夫 |
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居眠りをしても浮き世の渦の中 |
ひとみ |
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月明かり音頭へ影も踊り出す |
三桂 |
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浮き世絵の女画廊に立っていた |
実 |
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浮き世とは俺の廻りは酒だらけ |
蔦路 |
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肩書きのあるなし浮き世しらぬ顔 |
慶子 |
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義理いくつ捨てたら深くなる眠り |
花城 |
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犬に連れられ浮き世の校区ひと廻り |
節子 |
ラ |
坂道を浮き世の誰かピアノ弾く |
慶子 |
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つり鐘を撞いて浮き世と妥協する |
三桂 |
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浮き世の風が指をさすので振り向かぬ |
峰明 |
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明日もある慌てることもない浮き世 |
嘉矩 |
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野良猫に浮き世の義理を言い聞かす |
美智子 |
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どの町に住んでも馴染めない浮き世 |
花城 |
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あっぷあっぷしながら浮き世生きのびる |
瑛二 |
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腹の立つ記事へ浮き世を捨てて寝る |
安伸 |
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座禅してみても浮き世と切れぬ縁 |
直球 |
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なまぐさい話も聞いている浮き世 |
保子 |
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原点にもどると浮き世住みやすし |
さな恵 |
人 |
浮き世には幸せがあるどびん蒸し |
千津子 |
地 |
五時からは紫色になる浮き世 |
敏子 |
天 |
チャランポランに生きて浮き世をかもにする |
公輔 |
軸 |
教科書と異う答えが出る浮き世 |
握夢 |
兼題 「色」 田中節子 選
ラ |
色々とあって退屈しない箱 |
凪子 |
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色見本並べふくらむ家の夢 |
直球 |
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色ごとは教えはせぬが親ゆずり |
玄海 |
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曇りグラスわたしの色はびしょ濡れに |
ひさゑ |
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カラフルな頭も並ぶ祖母の通夜 |
ひとみ |
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白味噌に慣れ単身の京訛 |
克巳 |
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色でごまかす町の絵をかく子供達 |
如水 |
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共白髪ならずカラーに染められる |
克巳 |
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持ち時間デザインをして色染める |
三桂 |
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まなうらの思い出はみなラムネ色 |
実 |
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巣立つ子に保護色などは着せぬ父 |
実 |
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旗色を読むのが上手い風見鶏 |
峰明 |
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柿熟れて色よい返事待っている |
さな恵 |
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噂聞きもう色めがねかけて見る |
世津 |
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スカーフの色の淡さも夢の人 |
花城 |
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かくし色わたしの齢がわかったの |
俊枝 |
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ウインドを覗き流行の色盗む |
さな恵 |
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新しいドラマへ朱色書き足そう |
保子 |
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何色に咲いても君はいい女 |
海童 |
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少し異色な絵具だ長持ちするだろう |
公輔 |
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朝顔の色のはっきり雨期が去る |
無成 |
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中は未だ赤いとレアー見せたがり |
握夢 |
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彼岸花いろんなことがありました |
花城 |
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鮮やかな色で戻って来た噂 |
敏子 |
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生き生きて墨に七色あるを知る |
氷筆 |
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土こねる胸に炎の色描きつつ |
花城 |
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病人へ顔色悪いはないだろう |
峰明 |
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色々を服む掌で見る薬 |
世津 |
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言い分があるらし真っ赤な顔で来る |
嘉矩 |
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秋風のうなじを嬲る白い色 |
安伸 |
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沈黙のままに動かぬ石の色 |
無成 |
ラ |
くすんだ女が突き当たりに独り居る |
握無 |
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煙草一本秋色の街へ浸る |
千代美 |
人 |
紫の美しすぎる声なのね |
蔦路 |
地 |
例えばと似たような色探してる |
握無 |
天 |
じっと見つめてしまう暗がりの色 |
紀乃 |
軸 |
おばあちゃんの針きれいな錆色に |
節子 |
兼題 「熨斗」 里嘉矩 選
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熨斗つけてあげる三匹の子猫 |
さな恵 |
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名刺より効き目確かな熨斗袋 |
氷筆 |
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下心少し覗かせ熨斗を貼る |
玄海 |
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大層な熨斗だ中身は小さいな |
凪子 |
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期待より義理の勝ってる熨斗袋 |
与志夫 |
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御破算にするには熨斗が重すぎる |
敏子 |
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宗教を確かめ玉串料と書きかえる |
千代美 |
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熨斗袋見事に使いきった父 |
美智子 |
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ありったけの心を入れた熨斗袋 |
美智子 |
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気持ちだけいっぱいつまる熨斗袋 |
蔦路 |
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のし袋何時も持ってる孫十人 |
須磨代 |
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村芝居大きな熨斗と寄付の額 |
安伸 |
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秋晴れに慶事がつづく熨斗袋 |
秀子 |
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わずかばかりの心を贈るのしをつけ |
俊枝 |
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熨斗袋つぎつぎもらう大安日 |
三桂 |
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熨斗紙に餞と書く日の別れ |
花城 |
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せめて熨斗こころばかりを贈ります |
千津子 |
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おめでた続きうれしかなしの熨斗袋 |
敦子 |
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はげましの一言添える熨斗袋 |
秀子 |
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下手な字も心を込めて熨斗袋 |
世津 |
ラ |
一同の名がぎっしりとのし袋 |
世津 |
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のし袋喜怒哀楽をもて余す |
千穂 |
|
結局はキャツシュに決めた熨斗袋 |
克巳 |
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多すぎる少なすぎるとのし袋 |
世津 |
|
お返しの熨斗に迷いが少しある |
紀乃 |
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口惜しさも少しまじった熨斗袋 |
海童 |
ラ |
煮え切らぬ男を熨斗へ包み込む |
ひさゑ |
佳 |
もつれ糸軽くおさめたのし袋 |
千穂 |
佳 |
丁寧な熨斗のかたちで攻められる |
ひさゑ |
佳 |
七光り子等には過ぎた熨斗の数 |
与志夫 |
佳 |
寸志には少し豪華なのし袋 |
さな恵 |
佳 |
朗報に慌てて探す熨斗袋 |
直球 |
人 |
慶びの文字熨斗紙に踊らせる |
花城 |
地 |
二つ三つ帯に挟んだ熨斗袋 |
瑛二 |
天 |
熨斗のない親しさ松茸が届き |
衛門七 |
軸 |
脇役にも忘れず包む熨斗袋 |
嘉矩 |
兼題 「音頭」 福島直球 選
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乾杯の音頭になごむシャンデリア |
敦子 |
|
スマートに音頭とられてつい踊る |
凪子 |
|
好きな人の音頭で飲みについてゆく |
海童 |
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体操の音頭とるのは痩せた父 |
ひとみ |
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二次会をいつもの彼が音頭とる |
静 |
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うるさがたへ乾杯の音頭でも頼んどく |
千代美 |
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お祭りが好きで止まない音頭とり |
凪子 |
|
音頭とる櫓の君に二度惚れる |
氷筆 |
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タイミング計り会議の音頭とり |
世津 |
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恥かかぬ程度に音頭取ってます |
公輔 |
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松風も音頭も消して都市砂漠 |
ひさゑ |
|
最後また音頭とりたい課長の眼 |
千津子 |
|
ママの音頭で鴨の良い子ら渡り切る |
峰明 |
|
集まれば必ず音頭とる娘 |
須磨代 |
|
乾杯の音頭ひとこと長過ぎる |
与志夫 |
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捨て石が終章にして音頭取る |
祐子 |
|
頑張ろうの音頭拳で突き上げる |
日出夫 |
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花笠の顔のぞきたい総踊り |
海童 |
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音頭止む取り残された祭の灯 |
敏子 |
|
秋の海ひとりぼっちの音頭取り |
祐子 |
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阿波踊り桟敷で音頭とる団扇 |
玄海 |
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茶音頭に粋の極あり六下がり |
氷筆 |
|
山道になると音頭は鬼がとる |
安伸 |
ラ |
いつからか夫に音頭とる私 |
嘉矩 |
ラ |
河内音頭で時代の風をメツタ斬り |
敏子 |
|
リストラと無縁矍鑠たる音頭 |
花城 |
佳 |
音頭とる男に弾がよく当たる |
海童 |
佳 |
篤志家を見つける迄の音頭取り |
芳醇 |
佳 |
山襞に祭り音頭が消えて秋 |
玄海 |
佳 |
音頭とる母を亡くした冬の家 |
秀子 |
佳 |
人恋うる音頭揺れ行く風の盆 |
花城 |
人 |
手探りの闇を流れて行く音頭 |
花城 |
地 |
音頭とりなくても回る風車 |
秀子 |
天 |
母さんの音頭で朝が動きだす |
敦子 |
軸 |
急造の応援団で音頭取る |
直球 |
【出席者】 (順不同・敬称略) |
井元 照夫 |
長野 峰明 |
中西 保子 |
豊島 実 |
大橋 克己 |
花田 俊枝 |
藤川 芳醇 |
古谷 日出夫 |
近藤 嘉宏 |
近藤 敦子 |
田中 節子 |
沼尾 美智子 |
仲田 秀子 |
黒嶋 海童 |
森 ひとみ |
小西 慶子 |
椙元 世津 |
伊佐次 無成 |
樋口 祐子 |
長島 敏子 |
御影 静 |
山本 ひさゑ |
細谷 如水 |
瀬川 凪子 |
村上 氷筆 |
上村 さな恵 |
小山 紀乃 |
福島 直球 |
竹信 与志夫 |
島田 握夢 |
中岡 千代美 |
坂下 安伸 |
橋本 衛門七 |
里 嘉矩 |
青木 公輔 |
赤井 花城 |
坂本 須磨代 |
吉川 千穂 |
吉野 瑛二 |
前川 千津子 |
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