平成11年7月20日
神戸市勤労会館
今回のお題目(クリックするとそのテーマの川柳が表示されます)
(ラはラッキー賞)
特別席題 「海」 黒嶋海童 選
|
海鳥の鳴かない時のある予感 |
秋野 |
|
時空無限思い出だけの海となり |
実 |
|
太陽に俺とお前と海光る |
蔦路 |
|
盆過ぎて海の素顔も秋に入る |
衛門七 |
|
遠い日の海が私を呼んでいる |
瑛二 |
|
母の声きこえてきます秋の海 |
俊枝 |
ラ |
明日(あした)発つひとと最後の海の宿 |
秀子 |
|
口笛が河を渡って逢いに来る |
峰明 |
|
フルムーン母の生まれた海の町 |
慶子 |
|
民宿の満腹となる海の幸 |
世津 |
|
敗戦日ガ島の渚恋う老兵 |
克己 |
|
ほろ酔いのふと口ずさむ海の歌 |
秀子 |
|
銀河へとふずき文月の海をひた疾る |
皐月 |
|
夫老いてのたりのたりの昼の海 |
皐月 |
|
夕日沈めて水平線の波静か |
敏子 |
|
波の穂へ海の男の土性骨 |
日出夫 |
|
イルカ少年太平洋をまっぷたつ |
保子 |
|
強くなれよと怒濤さかまく父の海 |
峰明 |
|
ドラ鳴る街へ着てゆく服は海のいろ |
俊枝 |
ラ |
墓所を購うお望み通り海に向く |
要保 |
|
岩を噛む海に叱られ翻意する |
峰明 |
|
何事もなかった海のうらおもて |
無成 |
|
すったもんだあっても母の海を出る |
慶子 |
|
パレットに幸せ色の海がある |
祐子 |
|
海の上の諍かい知らぬ深海魚 |
瑛二 |
|
坂を下ると一気に海に出る小道 |
敏子 |
|
恋情のどこまで青き海ボタル |
実 |
佳 |
豹変の海の殺意を知っている |
皐月 |
佳 |
たどり着く岸を求めて波間の小瓶 |
凪子 |
佳 |
真人間になる迄海は渡れない |
千穂 |
佳 |
月も星も沈めて海を疑わぬ |
俊枝 |
佳 |
海の日の海の子騒ぐ西瓜割り |
芳醇 |
人 |
海鳴りの鼓動のリズム子の育つ |
芳醇 |
地 |
正論をかざすと海が荒れてくる |
さな恵 |
天 |
どの川も拒(こば)まず広い海がある |
凪子 |
軸 |
海が時々帰って来いと言う不遇 |
海童 |
兼題 「粘る」 中西保子 選
|
手作りのうどんの粘り母のもの |
要保 |
|
子の粘り負けた財布がくやしがり |
凪子 |
|
いつ言おう納豆どんどん粘くなる |
凪子 |
|
諦めの悪い口説きを聞くグラス |
海童 |
|
掛け引きに粘りをみせる小商い |
慶子 |
|
粘り勝ち知ってる孫は離れない |
要保 |
ラ |
結果とは別に粘りの汗を買う |
日出夫 |
|
貧しさをばねに粘りを身に付ける |
千津子 |
|
出歯亀の視線が粘る星明かり |
峰明 |
|
ゴール寸前勝ちまけがある一廻り |
無成 |
|
ファールファールよくぞ粘った逆転打 |
瑛二 |
|
葉の先に粘るめしべおしべの生まれつき |
無成 |
|
粘り腰強い男が好きと云う |
蔦路 |
|
一人だけ粘ってみても穴の中 |
紀乃 |
|
粘り腰見せねばならぬ剣が峰 |
海童 |
|
約束を半刻過ぎて揺れて待つ |
花城 |
|
綱かけて耐えた土俵の粘り腰 |
玄海 |
|
あと一手粘れば勝っていたかもね |
公輔 |
|
粘っても無駄な日もある雨屋台 |
玄海 |
ラ |
粘る気性じりじりと這う蟻一匹 |
如水 |
|
うっちゃりをかまして体を入れかえる |
芳醇 |
|
ぜんざい屋で粘っているのは三婆 |
俊枝 |
|
へそくりをねばって探す妻の留守 |
祐子 |
|
粘っても無駄と知るなり捨て台詞 |
要保 |
|
反骨の粘りライバル好きになる |
実 |
|
十球も粘りから振りする不思議 |
千津子 |
|
恋人が好きな納豆でもこれは… |
氷筆 |
佳 |
ダイエットまだあきらめぬ私です |
祐子 |
佳 |
一年中粘る再起のダルマの闇 |
無成 |
佳 |
リハビリへ粘るシューズに明日が見え |
芳醇 |
佳 |
約束を二時間過ぎた花時計 |
花城 |
佳 |
コーヒー一杯文学論の小半日 |
氷筆 |
人 |
鉢巻を粘る相手に締め直し |
世津 |
地 |
粘るリポのマイクをいなす小気味よさ |
峰明 |
天 |
言い粘る子の瞳に真実が光り |
衛門七 |
軸 |
ハンサムなセールスだった粘り負け |
保子 |
兼題 「内緒」 萩原皐月 選
|
絵馬に書く内緒を風が見てしまう |
さな恵 |
|
蜜の壺抱いているよな秘事ひとつ |
海童 |
|
児が隠す内緒の箱にある木の実 |
衛門七 |
|
リストラを妻に内緒で職さがし |
玄海 |
|
内緒では済ませぬつけ請求書が届けられ |
衛門七 |
|
夫婦にも内緒の微罪二つ三つ |
三桂 |
|
かけおちの父母だとは子に内緒 |
秀子 |
|
寝たり起きたり怠けていたのは内緒 |
世津 |
|
遠くでも目と目ないしょの話する |
保子 |
|
ここだけの話がすぐに呼ぶ波紋 |
瑛二 |
|
抽出しの奥に忘れていた内緒 |
要保 |
|
夫には夢の中身は内緒です |
俊枝 |
|
幼児が耳に口つけママ好きよ |
氷筆 |
|
パパとママの内緒を聞いて眠れない |
紀乃 |
|
内緒話がとっても好きなすきま風 |
敏子 |
|
内緒だがと言って噂の種を蒔く |
峰明 |
|
内緒だと念押したのが悪かった |
嘉宏 |
|
気が付くと内緒をみんな知っており |
世津 |
|
岩かげの花は内緒に山下りる |
安伸 |
|
内緒話聞いた途端に持ち切れず |
千穂 |
|
娘が為に内緒で増やす預金帳 |
日出夫 |
|
裏山の砦ぼくらの秘密基地 |
紀乃 |
|
内緒なの小さな声に目が光る |
千穂 |
|
急に声ころして市場かご二人 |
秀子 |
|
雲行きがあやしい内緒にしておけず |
蔦路 |
ラ |
耳打ちをされると後ろめたくなる |
花城 |
ラ |
内緒内緒いい風が吹いている |
祐子 |
佳 |
もう内緒してはおけないマタニティー |
克己 |
佳 |
おおっぴら内緒ないしょで結ばれる |
保子 |
佳 |
よく聞けばアハハと笑う内緒ごと |
さな恵 |
佳 |
お借りしたことを内緒にしてほしい |
千津子 |
佳 |
内緒の席へ外した顔がぬっと来る |
峰明 |
人 |
内緒事ドミノ倒しで駆け巡る |
芳醇 |
地 |
ひまわりの内緒お陽さまキャッチする |
静 |
天 |
内緒話が今赤信号を通過中 |
敏子 |
軸 |
内堀を埋める相談しています |
皐月 |
兼題 「ラジオ」 豊島実 選
|
ねむい目でラジオ体操へ子が走る |
日出夫 |
|
ボリューム一杯音楽が飛ぶ深夜便 |
克己 |
|
玉音放送囲んで泣いた羊たち |
凪子 |
ラ |
意気投合ラジオの歌を口ずさむ |
三桂 |
|
ラジオから飛び出すニュースに耳が馴れ |
秋野 |
|
東名高速彼のゆくえを追うラジオ |
保子 |
|
通勤の友はいつものカーラジオ |
紀乃 |
ラ |
山のぼり携帯ラジオに助けられ |
さな恵 |
|
旅枕洩れるラジオの馴染み声 |
嘉宏 |
|
老いの散歩に小型ラジオが供をする |
峰明 |
|
手仕事の時報は今もなつかしい |
千津子 |
|
カーラジオ切って迷路がつづく街 |
花城 |
|
ラジオ紀行神戸復興ものがたり |
凪子 |
|
山涼しラジオの演歌聴く樵(キコリ) |
衛門七 |
|
またひとりラジオ体操見えぬ顔 |
玄海 |
|
ラジオではヒーローの顔見えて来ず |
瑛二 |
|
まっさきに天気予報を聞くラジオ |
芳醇 |
|
匿名でウサを晴らしているラジオ |
氷筆 |
|
町内のラジオが最近風邪をひいている |
皐月 |
|
病人の孤独へラジオ話しかけ |
千津子 |
|
クレームは嫌な言葉のラジオです |
蔦路 |
|
四面楚歌ボクはラジオとふたりきり |
祐子 |
|
錆びついた右脳に丁度いいラジオ |
千穂 |
|
ふわふわの男が流すカーラジオ |
祐子 |
佳 |
ラジオ体操テンポ遅れの可愛い手 |
海童 |
佳 |
ビンタもらえば元気出す癖古ラジオ |
峰明 |
佳 |
玉音に哭いた紅顔暑い夏 |
玄海 |
佳 |
カーラジオトラック野郎は演歌派か |
日出夫 |
佳 |
盲人のラジオに四季が美しい |
衛門七 |
佳 |
眠れない夜はラジオと仲がよい |
さな恵 |
人 |
北の果て異国の声もするラジオ |
海童 |
地 |
ラジオから音信不通の人の声 |
氷筆 |
天 |
ラジオだけいつ迄しゃべる枕もと |
安伸 |
軸 |
熱戦のラジオで時計狂わせる |
実 |
兼題 「夢中」 吉野瑛二 選
|
憧れを夢中で追っていた花野 |
皐月 |
|
褒められたピアノそれからの夢中 |
千津子 |
|
おしゃべりに夢中奥さま方の午後 |
紀乃 |
|
苦い挫折夢中になれるものがない |
秀子 |
|
カラオケに夢中のまんま職がない |
蔦路 |
|
知るものを知って夢中になれぬ恋 |
衛門七 |
|
無我夢中出なおすことになる挽歌 |
無成 |
|
堅ぶつを夢中にさせた片えくぼ |
さな恵 |
|
あの人を夢中に追えば遠花火 |
秋野 |
|
泥舟を夢中で漕がすにくい男 |
日出夫 |
|
プラモデルに夢中ある日の父の背な |
さな恵 |
|
D51(デゴイチ)に夢中シャッター押しつづけ |
敏子 |
|
この娘もやはり私と同じ恋一途 |
氷筆 |
|
阪神にチャンスおなべは焦げてます |
公輔 |
|
わたしよりママが夢中になった彼 |
氷筆 |
|
夢中にはなれない年齢(とし)の恋なのに |
秀子 |
|
阪神に夢中でついつい増える酒 |
敏子 |
ラ |
応援の六甲おろし山笑う |
慶子 |
|
金魚追う夢中に浴衣の袖がぬれ |
日出夫 |
|
もぐら叩き夢中で自説曲げぬまま |
三桂 |
|
夢中になって読んだハーンの怪談 |
芳醇 |
|
オムレツに夢中になったむこ養子 |
蔦路 |
|
夢中にさせるひと女が居て眼を伏せる |
安伸 |
|
幸せを夢中で探る試着室 |
祐子 |
|
恋夢中画布にきらめく虹がある |
実 |
|
子育てに夢中の頃の森を観る |
嘉宏 |
ラ |
無我夢中瓦礫這い出し早や五年 |
克巳 |
佳 |
無人駅をやたらと撮っているマニア |
公輔 |
佳 |
お互いの年が夢中にさせぬ恋 |
衛門七 |
佳 |
パズルに夢中君の心は解けぬまま |
海童 |
佳 |
耳掻き一杯の愛夢中で守る |
祐子 |
佳 |
無我夢中生きて来たねと風が言う |
海童 |
人 |
夢中になるインターネットの落し穴 |
静 |
地 |
無我夢中一夫一婦のコマ廻る |
無成 |
天 |
冷蔵庫夢中になれぬ本を置き |
嘉宏 |
軸 |
貴女には夢中と書いた日の日記 |
瑛二 |
【出席者】 (順不同・敬称略) |
上村さな恵 |
椙元 世津 |
長野 峰明 |
中西 保子 |
花田 俊枝 |
樋口 祐子 |
吉川 千穂 |
山田 蔦路 |
伊佐次無成 |
長島 敏子 |
藤川 芳醇 |
吉野 瑛二 |
田中 要保 |
近藤 嘉宏 |
小西 慶子 |
黒嶋 海童 |
仲田 秀子 |
細谷 如水 |
豊島 実 |
荒垣 秋野 |
橋本衛門七 |
萩原 皐月 |
御影 静 |
瀬川 凪子 |
前川千津子 |
古谷日出夫 |
大橋 克己 |
赤井 花城 |
【投 句】 |
小山 紀乃 |
坂下 安伸 |
村上 氷筆 |
倭 玄海 |
中本 三桂 |
青木 公輔 |
※作品の著作権は、全てきやびん川柳会に帰属しています。無断転載、無断使用はご遠慮ください。